LGWAN環境で使える電子契約サービス 申請・承認業務のDX推進を支援

行政業務のデジタル化が進む中で、電子契約サービスの利用は必須となっている。今般、アドビ社と京都電子計算が協業し、市場で最も支持を集めている電子契約サービス「Abobe Acrobat Sign」が年内にもLGWAN環境下で使えるようになる。

行政業務のデジタル化が急務だ。アドビ社のデジタルメディア事業統括本部営業戦略部ビジネスデベロップメントマネージャーの岩松健史氏はその背景として、コロナ禍による行政サービスへの住民ニーズが増加したこと、企業における在宅勤務・リモートワークが普及したこと、マイナンバーカードが一気に普及しつつあること、の3点を挙げる。

アドビ デジタルメディア事業統括本部 営業戦略部 ビジネスデベロップメントマネージャー 岩松 健史氏

クラウドサービスを安全な
環境で自治体が使うために

その流れを受け、各行政機関において紙で行われていた業務をいかに円滑にデジタルに移行するかが求められている。特に、調達・入札時の契約業務、住民、企業からの申請業務、行政機関からの認可や認定業務などはデジタル化の対象となるが、「ハンコに代わる本人性の確保、行政機関が認可した電子ドキュメントの証明、さらには短時間に集中する申請処理に対応するためのセキュリティ対応やクラウドシステムの活用をどのように進めていったらよいのかといった要望、相談が行政機関から多く寄せられています」という。

行政機関におけるクラウドサービスの利用は待ったなしの状態だが、岩松氏は行政機関がクラウドサービスを利用する上での課題として「セキュリティ&ネットワーク」「システム構築」「データ移行」「運用&障害対応」の4点を列挙。なかでもセキュリティ&ネットワークの重要性に触れ、「インターネットとつなげる場合、ウイルス侵入などのリスクを避けるために自治体内部と外部のネットワークを分離するためのネットワーク構成が求められており、認可されている安全なクラウドサービスをいかに選定できるかがカギを握る」と指摘する。

総務省は、自治体において個人番号(マイナンバー)を始めとした個人情報などが漏洩しないよう、セキュリティを万全にするため「個人情報を扱うマイナンバー利用事務系」「自治体を維持するための業務で使うLGWAN接続系」「メールの利用やホームページを参照するなどの業務・サービスで使うインターネット接続系」の3つに分けてネットワークを構築する三層分離の対策を求めている。

図 自治体ネットワーク「三層の対策」

出典:アドビ

その上でクラウドを活用して業務システムを導入する場合には2つのアプローチが存在する。「α(アルファ)モデル」は、行政機関の中で安全に使えるLGWAN回線に接続し、認可されたクラウドサービスのみを使うことができるパターン。これに対し「β'(ベータダッシュ)モデル」は、専用のインターネット接続の窓口を設け、安全に利用できると判断されたクラウドサービスに接続できるパターンだ。ただβ´は高度なセキュリティの設定が必要でセキュリティコストがかさむという問題点があり、αモデルでいかにクラウドサービスを使えるかというニーズは根強い。

各種システムと連携し、電子署名

アドビは、紙業務をデジタル化し、渡す相手の環境に依存することなく見読性を保証したPortable Document Format/PDFを1993年に開発。その後業務の現場で証拠性の高いドキュメントニーズの高まりから証明書への対応や、最近では電子サイン署名を可能にし、電子契約を行うためのフローを組み立てることができるAcrobat Signをクラウドサービスとしてグローバルに提供している。

また、既存の業務システムの中に組み込めるところも強みとして挙げられる。セールスフォースやマイクロソフト、キントーンなど様々なシステムとノーコードで連携できるコネクターを提供することで、「業務システムに格納された情報と文書の連携」「署名者情報を業務システムから取得し署名依頼を送信」「署名済み文書を業務システムに自動で送信して保管」といったことも実現可能だ。その事が、IDCの調査結果レポート「2021年国内電子サイン市場動向」において、アドビの電子サインサービスが1000人以上の大企業で1位を獲得している大きな理由のひとつでもある。

LGWAN下で使える
クラウドサービスを増やす

京都電子計算は、クラウドサービスをLGWANに接続する事業「Cloud PARK」を推進してきた。今般、ソリューションパートナーとしてアドビと協業を進めている。京都電子計算の下田大貴氏は「αモデルではセキュリティ上使いたいクラウドサービスが利用できない、それを使いたいがためにインターネット接続系の端末を用意せざるを得ず、運用回避が発生してしまう、といったケースも多いのでは」と問いを投げかける。

京都電子計算 企画営業本部 企画課 下田 大貴氏

そうしたストレスを解消すべく同社では先進的な技術やパッケージ、クラウドサービスをLGWAN経由で全国自治体に提供する「Cloud PARK」を推進してきた。現在は自治体向けパッケージ利用をあわせ、全国約640自治体での採用実績がある。この「Cloud PARK」のラインナップに今回新たに、既に国内で多くの実績があるAcrobat Signが加わる。

これによってαモデルの環境で通常の業務を行っているLGWAN端末からブラウザ経由で契約書等の電子書類のやり取りや電子契約が可能となる。「契約業務では、庁内で承認フローが必要となるケースを想定しているが、Acrobat Signであればのワークフローはかなり限定的な事もありこの様に言い切ってしまうのも危険な感じがします。例えば業務にあわせたフローを構築でき、マイクロソフト製品をはじめ他社システムとも柔軟に連携することが可能なので自治体の業務に合わせた利用が可能」と下田氏は話す。

現在、Acrobat Signとの連携を実証中で、2022年内にはサービス提供が可能になるという。

 

お問い合わせ先

京都電子計算株式会社
URL: https://www.kip.co.jp/contact/

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