幸福の追求が経営の王道、これからの企業が提供すべき価値とは

今や企業にとって無視できない要素となったSDGsやESGへの取り組み。しかし、経済・社会・環境が調和した開発自体は手段であり、最終的な目標は未来世代も含めたすべての人の幸福であるはずだ。企業は人々にとっての幸福とは何かを考え、それをいかに実現するかが問われている。

制御幻想と
公正世界信念からの脱却

強く念じればルーレットでは自分が賭けた目が出るはずだし買った宝くじも当たるはずだ、とまでは信じなくとも、自分のチーム、あるいは贔屓のチームがスポーツの試合で勝ってほしいと強く願えばきっとその通りになる、あるいはこれだけ苦労をしているのだから必ずやいずれ報われるに違いない、と思う方は多いだろう。こうした「精神一到何事か成らざらん」とか「一念天に通ず」といった精神論には「制御幻想」という名前がつけられており、よい行いをしていれば報われるし不運な目にあうのは日ごろの行いが悪いからだという偏見は「公正世界信念」と呼ばれている。

強い思いを抱いて成功した人の話を聞いたり、強く念じてその通りになった経験があったりすると制御幻想や公正世界信念はますます強くなるだろうが、それはまさに「確証バイアス」である。私たちは偶然をきらい、たまたま生じた出来事の間に何らかの因果関係を見出さずにはいられない存在なのである。

人生やビジネスの成功を運が大きく左右しているのは間違いないが、闇雲に運に任せるのではなく、時間やチャンスなど限られたリソースを的確に配分して成功の確率を上げる必要があり、そのためには制御幻想や公正世界信念からできるだけ自由になって、精神論ではない戦略を練る必要がある。

人類共通の目標・幸福

世界中の首脳たちが競うように高い目標を掲げ始めた気候変動の進行を緩和するための温室効果ガスの排出抑制でも同様である。2050年までに正味ゼロ排出にするという信念をもって取り組んでいたら必ずや達成されるというわけではない。まして、環境問題でよく語られるようにできることから始めて、日々の暮らしでできることだけやっていては達成できない可能性が高い。現実から目を背けず、やらねばならないことをやる必要がある。

太陽光・風力・地熱発電など再生可能エネルギーへの転換といったエネルギー供給側での対策に個人として貢献できるのは割高でもそうしたエネルギーを利用するといったことくらいなので、消費側での対応が個人では主となる。

しかし、例えば、ガソリン車を電気自動車や水素自動車に買い替えるだけでは製造時に必要とされる温室効果ガス排出を大幅には減らせない。個人が車を所有せずとも移動の自由を確保できる街づくりから人とモノのモビリティを根本的に変革する必要がある。暖房は低めの温度設定にするだけではなく家屋の断熱を高め厚着をする、照明はLEDに替えこまめに消すだけではなく早寝早起きで照明が必要な時間帯・場所では活動しない、家は太陽光発電パネルを設置しZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)にするよりも一戸建てからできるだけ狭い集合住宅に転居する、テレビや家電も待機電力を減らすとかこまめに消すというよりはできるだけ小さく最低限必要な冷蔵庫と洗濯機以外は所有しない、風呂は家族が続けて入るようにするよりは2日に1度など頻度を減らす、といった対応の方がエネルギー消費に伴う二酸化炭素排出は大幅に削減できる。年間を通じて暖房や冷房ができるだけ不要な地域に移住する方が有効な場合も多いだろう。

そこまでしなくとも、と思うかもしれないが、私たちは生きているだけでそれなりの温室効果ガスを直接・間接に排出し、土地も改変して生物多様性に干渉し、地球環境を悪化させ資源も枯渇させている。実際、あまり大きく報道されないが、気候変動対策には人口抑制が必要であるという無邪気な意見を述べる研究者もいる。地球環境を悪化させる悪の根源だとしてロボットやAIが人類を駆逐しようとする物語もSFの世界にはありふれている。

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