「Ruby」を軸にしたIT産業振興から、異次元の誘致へ

島根県松江市に住むまつもとゆきひろ氏が開発した、プログラミング言語「Ruby」。このRubyを軸に、松江市が開始したIT産業振興プロジェクト「Ruby City MATSUEプロジェクト」は、2006年の開始から15年が経過した。まちは、どのような変化を遂げたのだろうか。

プログラミング言語の
「Ruby」で地域創生

島根県松江市の人口が減少に転じた2005年。新しい産業を生み出し、若者の働く場を作り、人口流出を防ぐことが喫緊の課題として上がる中、プログラミング言語「Ruby」の開発者・まつもとゆきひろ氏が、松江市に住んでいることが雑誌に取り上げられた。

「当時は、高速インターネットが広まり始めた時代です。こうしたプログラミング言語の役割が今後大きくなると予想される中、人口減少を食い止めるための新たな市の産業振興施策として2006年にスタートしたのが、『Ruby City MATSUEプロジェクト』でした」と今年3月まで同市産業経済部に所属し、同プロジェクトの担当者を務めた本田智和氏(2021年4月より同市子育て部)は語る。

本田 智和(松江市産業経済部)

産業振興のゴールは雇用を生むことで、地方自治体の行う雇用拡大策の多くは、大規模な工場を誘致することだ。しかし、予算規模が小さい地方都市で、さらに2つの湖と山々に囲まれ広い土地を確保できない松江市では、そうした王道の産業振興は難しかった。

「そこで、まつもとさんが開発されたRubyに注目したのです。Rubyを使いこなせる人材を生み出すまちになれば、自ずとIT関連企業が松江市に集まるのではと、Rubyで地域創生を目指すことになりました」(本田氏)

「Ruby City MATSUEプロジェクト」が最初に手掛けたのは、まつもと氏の「人の集まる場が必要」というアドバイスをもとにした、松江駅前の「松江オープンソースラボ」の開設だった。

まつもとゆきひろ氏のアドバイスにより開設した、JR松江駅前の「松江オープンソースラボ」

「駅前の目立つ場所に、エンジニアが自由に集まって勉強したり、新しい挑戦をして、技術を上げながら横のつながりを作っていけるコミュニティスペースをつくりました。次に、島根大学や松江高専などの高等教育機関でのRubyのプログラミングやオープンソースを活用した講義、近年では、島根大学で学生と企業が共同で行う『システム創成プロジェクト』に取り組んでいます。小中学校でもRubyの授業を行うなど、技術人材の育成に力を入れています。基本的に、人材づくりを重視してきたのがこのプロジェクトの特徴です」(本田氏)

15年間で40社が
松江市にオフィスを開設

「『Rubyを軸に企業誘致をして雇用を生む』という当初の目的は、15年間で一定の成果がでました。人材育成に力を入れた結果、そうした人材を求め、プロジェクト開始から約40社の企業が松江市にオフィスを開設しました」と松江市定住企業立地推進課の土江健二氏は語る。

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