リコー 既存領域の技術から新素材を開発、市場開発に挑む
傷ついたウミガメの姿が報道されたことで一気に盛り上がった脱プラの取り組み。複写機やオフィスソリューション提供のグローバル大手・リコーは、長年の研究で培った技術を元に植物由来プラの市場開発に着手。他社ともパートナーシップを組み、回収・再生までのループ構築を狙う。
"複写機のリコー"がなぜプラ素材を?
複写機やプリンター、デジカメなどの情報機器を中心に、オフィスソリューションを提供するリコーグループ。創業より〈人を愛し 国を愛し 勤めを愛す〉の〈三愛精神〉を企業活動の原点に据える同社は、サステナビリティに関する取り組みに積極的な企業としても知られる。1990年代からいち早く環境経営に取り組み、現在も持続可能な社会の実現に向け価値を提供していくという強いメッセージを出している。
同社が昨年11月にリリースした〈PLAiR〉(プレアー)は高い生分解性を有する植物由来プラスチック。強さとしなやかさを併せ持つ新素材だ。事業化を手がけたのは、プリンターのトナーや感光体ドラム等の技術研究開発から生産までを担うCT&P(Chemical Technology & Products )本部の新素材事業開発室。これらのコア技術を活用した新素材開発をミッションとしている。
「"複合機メーカーのリコーがなぜ植物由来プラスチックに取り組むのか"というご質問をよく受けます」と話すのは、室長の山口秀幸氏。新素材には、社を挙げた環境経営の一環で2009年に生み出された植物由来トナー技術が転用されている。〈PLAiR〉を開発した新素材開発グループの根本太一氏は、「SDGs達成に貢献できるものを考えたとき、改めて研究過程で得られた知見を活かせると気づきました」と語る。
「当社の使命は、"世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、生活の質の向上と持続可能な社会づくりに責任を果たす"。私たちの技術を用いた環境負荷の低い〈PLAiR〉は、この使命に則った素材と言えます」(山口氏)
トナーで培った技術で
プラごみ問題を解決
〈PLAiR〉はトウモロコシなどに含まれるデンプンを原料とするポリ乳酸(PLA)からできたプラスチック。石油樹脂を原料としたものに比べ性能面で課題を抱えていた。同社では、PLA内にフィラーを均一分布させ、そこを核に発泡させる独自の〈超臨界CO2微細発泡技術〉でこの弱点を克服。発泡ポリスチレンシート、いわゆる発泡スチロールと同等の強度、耐熱性を持たせることに成功した。発泡倍率を変えることで緩衝材や梱包材、食品容器、各種トレー、部品パーツ等幅広い製品に加工できるのも特徴だ。
全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。
-
記事本文残り51%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。