蔵を起業家創出拠点に再生 女性の力を地方創生に活かす

2020年、村田町に地方再生の足掛かりとなるインキュベーション・ラボが誕生した。東日本大震災を機に設立された「伊達女(だてのくのいち)」が、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された町並みを活かしながら、女性が起業の夢を実現できる場を提供している。

小濱 裕美(一般社団法人伊達女 代表理事)

起業を目指す女性のパワーで
地域の潜在力を引き出す

宮城県仙台市を拠点にコンサル業などを手掛けていた小濱裕美氏は、2011年の東日本大震災に見舞われた夫の故郷・気仙沼を訪れ、仕事を失い、仮設暮らしを強いられている女性たちの姿を見て何か支援をしたいと考えた。そして翌2012年、見えないところで被災者の気持ちを支える忍者のような存在になりたいという気持ちを込めて「だてのくのいち」と名付けた有志団体を立ち上げ、藍染めワークショップの実施や、全国から被災地に入る支援者の活動状況などを伝えるラジオ番組のパーソナリティを続けた。2013年5月には助成金を受けるために法人化し、「3・11以前より幸福に生きる」をキャッチフレーズに、被災地復興、女性が活躍できる事業の創出に寄与することを目的とした活動や支援を続けてきた。

「5年ほどで活動は一旦落ち着いたのですが、2019年に村田町の町長さんにお会いする機会があり、緑豊かな里山の町に空き民家が増えてしまったことや、保存地区の活性化が進んでいないという課題を伺いました。私は個人でコンサルをしているので、起業したいという女性のパワーを地方創生に活かせるような循環型スキームを、伊達女のプロジェクトとして組み立ててみようと思ったのです」(小濱氏)

長年使用されていなかった築100年の店蔵・母屋を団体の拠点にすると決めたのは、かつて北前船による交流が盛んな頃、上方と紅花や藍の交易で栄えた歴史の名残だと知ったからだ。村田城址から見下ろす町は「みちのく宮城の小京都」と称されたことも。使われていない蔵、使いたくても家主から許可が得られない物件が多いからこそ、時代に合ったものに磨き上げれば、町並みに賑わいを取り戻す原動力になるというサンプルを作ろうと考えた。

2019年11月から4か月をかけて、伊達女のメンバーや地域おこし協力隊、県内の大学生等の力を借りて、畳替えや襖貼りなどの大掃除を行った。流行りのリノベーションではなく泥臭い手作業にこだわったのは、歴史の恩恵にあずかるという敬意の表れだったという。

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