持続可能な社会に向け、高速道路のイノベーションを加速

道路関係4公団が民営化され15年。40兆円の債務は着実に減少し、高速道路のサービスエリアは民間のノウハウを取り入れて様変わりした。一方、老朽化道路の更新には今後も大きなコストとマンパワーが必要だ。中日本高速道路の今後の経営方針について、宮池社長に話を聞いた。

通行料を債務返済に充て
関連事業で収益を上げる

2005年に道路関係4公団が民営化された。その目的は、①約40兆円に積み上がった有利子負債を確実に返済、②真に必要な道路を会社の自主性を尊重しつつ早期にできるだけ少ない国民負担で建設、③民間ノウハウ発揮により、多様で弾力的な料金設定や多様なサービスを提供、の3点だった。これは、6つの高速道路会社の経営目標でもある。

宮池 克人(中日本高速道路 代表取締役社長CEO)

中日本高速道路(NEXCO中日本)の宮池克人社長は、「高速道路に係る債務の早期かつ確実な返済を担うのは、各事業会社ではなく独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構です。機構が道路資産を保有して各社に貸し付けし、高速道路の通行料を『貸付料』として徴収して、債務の償還等に充てるというスキームです。当社は高速道路の建設・管理を行いますが、利潤を得ることができるのは、サービスエリアやパーキングエリアの運営といった関連事業から発生するものだけです」と説明する。

ソフト充実で「もてなし」
ハード整備で「道路を守る」

民営化後、2020年3月までに中日本高速道路は6.1兆円の賃借料を機構へ支払っており、順調な債務返済を後押ししてきた。加えて、「NEOPASA」「EXPASA」と称されるサービスエリアを展開。ファミリー層向けにキッズコーナーやベビールーム、長距離運転手向けにシャワールームやコインランドリーを設置し、多言語化やバリアフリー化も積極的に推し進めてきた。特に、トイレの刷新は利用者からの反響が大きい。

「NEOPASA駿河湾沼津」の商業施設内女性用トイレのパウダールーム。広々とした空間に1人ずつのスペースを確保

「臭い・暗い・汚いの『3K』のイメージを払拭し、キレイ・清潔・臭わないをキーワードに、施設の改修や清掃方法の工夫、清掃スタッフの育成に努めております。コロナ禍でインバウンドが縮小していますが、特に海外からお越しの方は驚かれますね。忘れ物をお知らせしたり、倒れた人を検知したりと、AIを活用したサービスを付加しているところです」

売上の肝となるのが、土産品の販売だ。2016年からは旅行情報誌「じゃらん」の編集部も参加する形で、まだ世の中に広く知れ渡っていない地域の食材や品質にこだわった土産品を、プレミアムなみやげ=「プレみや」と認定。2019年12月の新商品で第12弾を数え、スイーツ、和菓子、調味料、郷土料理などラインナップはバラエティに富んでいる。

また、サービスの質向上に一役かっているのが、52カ所に配置されたエリア・コンシェルジュの存在だ。問い合わせへの対応や各種案内、ベビールームや救護室の管理、エリア内の安全巡回や体調が優れない利用者への緊急対応など多岐にわたる役割を担い、制服姿で"おもてなし"を提供している。

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