2020年12月号
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ヘルスケアビジネスの新戦略

公的保険制度のある日本で成り立つヘルスケアビジネスとは?

加藤 浩晃(東京医科歯科大学 臨床准教授、アイリス 取締役副社長CSO)

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医学・行政・ビジネスの3つの観点から医療・ヘルスケア業界における新戦略を考察する本連載。今回は、日本の医療制度の特徴でもある国民皆保険制度をふまえたビジネスのあり方を考察する。公的医療が充実した状況で成立するビジネスモデルとは、どのようなものだろうか。

ヘルスケアビジネスでも
“収益”は大切

今回はヘルスケアビジネスを「ビジネス」の視点から考えていこうと思います。もちろん「ビジネス」なのですから、適切な収益を上げて、持続的にサービスを提供できるようにしないといけません。ただ、医療・ヘルスケア領域の課題解決だけにフォーカスしてしまい、「どのように売上を上げるか」という視点が抜け落ちてしまっている事業アイデアも見かけます。売上が上がらない事業であれば、それは株式会社ではなく別の法人形態(NPOなど)での実行を考えてもよいでしょう。今回はヘルスケアビジネスで収益を上げるという視点を中心にお話をしていきます。

ヘルスケアビジネスの障害?
国民皆保険制度

収益を上げるという視点で医療・ヘルスケア業界を見たときに収益面での一番の障壁となっているのが、日本が「国民皆保険」制度の国だということです。まず、国民皆保険の大まかな概要を確認しましょう。

日本では国民皆保険制度を導入しており、誰もが公的医療保険に加入しています。そして、患者さんが医療機関に支払うお金は、本来かかった医療費の一部だけです。皆さんも病気や怪我をして医療機関を受診して診察や治療を受けた経験があると思いますが、その際にかかる費用は窓口で支払った額が全てではありません。患者さんはかかった医療費の3割、または1割を「窓口負担」として支払っています。残りの7割や9割は、皆で出し合った医療保険で賄われているのです。

日本の全国民(在留資格を持つ外国人含む)は、必ず公的医療保険に加入しないといけないというルールとなっています。公的医療保険は大きく2つに分かれており、会社勤めをしている人は社会保険(社保)、自営業者や年金暮らしの高齢者は国民健康保険(国保)に加入しています。わかりやすい例が、会社の退職による公的医療保険の変更です。企業在職中は社保に加入していますが、退職して独立するなどした場合は国保への加入に変わります。

国保は2018年度より市区町村が運営しており、社保は企業が作った健康保険組合もしくは全国健康保険協会という組織が運営しています。まずは国保と社保、この2つを知っておいてください。その他に共済組合という公務員が加入する公的医療保険や、船員保険という医療保険もあります。また、75歳以上の高齢者は国保や社保でなく「後期高齢者医療制度」と呼ばれる保険制度に加入しており、窓口自己負担料が1割となります。これは診察だけでなく、薬などにも適用されます。

さて、海外で旅行中に病院に行くと1回あたり2万円くらいかかったという話を聞いたことはありませんか?もしくは盲腸(虫垂炎)の手術をしたら200万くらいかかったという話を聞いたことがありませんか?

まずざっくりした話をすると、海外での医療費は、国民皆保険制度の下にある日本の感覚から言うと非常に高額です。

例えばアメリカでは対面で診察を受けると高額の医療費がかかりますが、オンラインでの診察はそれに比べ安いとされています。しかしそれでも1回5000円ほどであり、日本の感覚では高く感じるでしょう。そのためアメリカでのサービス開発は、対面で診察を受ける費用に比べると安いというようなモデルで行われています。

一方日本に目を向けると、そもそも初診で診察を受けても、多くの場合支払いは2000~3000円程度なのではないでしょうか。この支払額は3割負担での金額なので、本来は1万円程度の医療提供を受けているということになります。

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