逆参勤交代が拓く1000億市場、ニューツーリズムの未来

コロナ禍で大打撃を受けている観光業界。このピンチをチャンスに変える切り札のひとつが〈逆参勤交代〉だ。"観光以上移住未満"の新たなツーリズムとは何か。住民との交流や深い学び、地域への貢献など、その多面的な効果を、提唱者の松田智生氏が解説する。

〈逆参勤交代〉が切り札に

今回のコロナ禍により観光業界はインバウンド依存のリスクが顕在化された。このピンチをチャンスに変える切り札として、2017年から提唱している〈逆参勤交代〉を示したい。〈逆参勤交代〉とは都市生活者の地方への期間限定型滞在である。筆者は今地方に移住や転職は不可能だが、この数カ月でリモートワークのIT環境が整ったので、地方で数週間の滞在は可能だ。

満員電車もなく、ゆとりある環境で仕事に集中し、地域を観光するだけでなく貢献もする。江戸の参勤交代で、江戸に新たな人の流れが生まれたように、逆参勤交代者という"観光以上移住未満"の関係人口の創出で、宿泊業、交通機関の稼働率を高め、疲弊した地域経済を活性化する構想だ。

逆参勤交代ニューツーリズムで
1000億市場を動かせ

逆参勤交代は観光業に多面的なメリットを与える。逆参勤交代者は地域のホテルや旅館に宿泊し、宴会場や会議室、地域のカフェはオフィスになる。パソコンに向かうだけではもったいない。逆参勤交代者は地域でニューツーリズムを体験する。例えば地域の魅力や課題を発見する"ローカルイノベーション型"、健康診断や健康支援プログラムをセットにした"ヘルスケア型"、地域の環境や持続可能性を体験する"SDGs型"、シニア層の移住やキャリア転換を促進する"セカンドキャリア型"であり、逆参勤交代はニューツーリズムの起爆剤となる(表)。

表 逆参勤交代が生み出すニューツーリズム

出典:筆者作成

 

年間消費額で見れば、逆参勤交代1人がインバウンド10人、国内宿泊旅行者26人を補える1)。地域活性化は、観光客より逆参勤交代者の誘致に活路ありだ。ターゲットは個人客でなくマスボリュームの法人顧客だ。首都圏・近畿圏での大企業の従業員数は、約1000万人2)、1割の100万人が年に1カ月間逆参勤交代すれば、100万÷12カ月で約8.3万人、定住人口の年間消費額124万円を前提にすれば3)、約1000億円の消費が創出される。さらに地域の雇用増、税収増の多面的な経済波及効果が期待できる。

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