知的障害への偏見をアートで変える 建設の「仮囲い」に作品展示

花巻市から、福祉を軸に様々な事業を展開するスタートアップ、ヘラルボニー。知的障害のあるアーティストの作品をアパレル製品や街なかの装飾として社会に広め、金銭的にも社会的にも正当な評価を得られるようプロデュースする。

ヘラルボニー(岩手県花巻市)は、社長を務める松田崇弥氏と、副社長の松田文登氏の双子の兄弟が運営する企業だ。設立は2018年7月。知的障害のあるアーティストの作品を、ネクタイやハンカチなどの製品にしたり、駅や工事現場の囲いに作品を掲示するなどのビジネスを展開している。

ヘラルボニーの松田 崇弥社長(左)、松田 文登副社長。ネクタイは自社製品

作品から受けた衝撃を広めたい

両氏の4つ上の兄が自閉症で、子どもの頃から兄と一緒に福祉施設を訪問したり、イベントに参加したりする機会が多かった。そのかかわりの中から、「いつかは福祉の領域に進みたいと考えていました」と、崇弥氏は振り返る。しかし、すぐに福祉系の道に進むことはなく、崇弥氏は東京の広告会社でプランナーとして働き、文登氏は東北の大手建設会社で、東日本大震災からの復興に携わっていた。

ヘラルボニーを起業するきっかけとなったのは、花巻市の社会福祉法人光林会が運営する「るんびにい美術館」で、知的障害のあるアーティストの作品に触れたこと。「社会人3年目くらいの時に訪問し、衝撃を受けました。この凄さを福祉業界を超えて広めていくことはできないかと考えました」(崇弥氏)。

障害者を含む、正規の美術教育を受けていないアーティストの製作した芸術作品は、「アウトサイダー・アート」や「アール・ブリュット」と呼ばれている。展覧会が開かれたり、作品が美術市場で取引されるアーティストもいる。ヘラルボニーでは、国内の知的障害のあるアーティストの作品を世に広めることを目指している。「アート作品を、アートの土俵に乗せてビジネスにし、障害のある人のイメージを変えたり、賃金アップにつなげていきたいと考えています」と文登氏は狙いを語る。

現在のヘラルボニーの主なビジネスは、アーティストの作品を服飾製品などにデザインして販売する事業と、事業者と組んで工事現場の仮囲いなどに作品を展示する「全国仮囲いアートミュージアム」だ。

ヘラルボニーが最初に製品化したのは、紳士用品の老舗・銀座田屋と作ったシルクネクタイ。アーティストの作品を絹地に織りネクタイにしたもので、2万2000円という価格にもかかわらず人気を集めた。以降、日本国内で製品を生産しているメーカーと組んで、ハンカチや扇子などに製品の幅を広げている。製品はオンラインショップのほか、丸井やパルコ、盛岡市の老舗百貨店であるカワトクやなどに期間限定ショップを出店して販売してきた。色遣いなどに独特の魅力があり、プレゼント用に購入する女性客に人気だ。

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