2020年6月号

MPD発の新規事業

外国籍人材の定着で企業のグローバル化支援

杉本 裕樹(iiiis agent 代表取締役)

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グローバルビジネスへの機運が高まるなか、外国籍人材の活用に関心が高まっている。人材の希望を見極めたうえで、長期的な定着を促すことが、企業の成長にもつながる。留学体験を原点に、「イロトリドリの才能が日本から世界を明るくする」社会とは。

杉本裕樹(すぎもと・ゆうき)iiiis agent( イース・エージェント)代表取締役 事業構想大学院大学 5期生(2017年度修了)

杉本氏は大学卒業後、転職支援サービスを手掛ける企業で11年働いたのち、事業構想大学院大学に入学した。大学院修士課程在学中に退職し起業、現在、外国籍人材の就労支援を手掛けるiiiis agentで代表取締役を務める。

そもそも、外国籍人材に注目した経緯とは何か。「中学・高校、そして大学での1年間を合わせ計6年、世界中から多くの留学生を受け入れている英国のボーディングスクールで中学・高校を過ごし、帰国後改めてロンドンの大学に1年留学したことから、多国籍な環境で異文化が集う場所に刺激的であり心地よさを感じていました。前職では、外国籍人材を担当していたわけではなかったのですが、新しい事業を興すのならば、こうした自分のバックグラウンドを強みとして活かすのが良いと判断しました」(杉本氏)

「在学中に出会った同期のメンバーで学外活動の一環でディスカッションをして集まる機会があり大きな刺激を得ました。大学院では、外国籍人材に関して直結した授業があったわけではありません。しかし、多様な知が集まって、新しいものが生まれる過程・異文化から生まれるシナジーに感銘と刺激を受け起業の後押しとなりました。こうした経験が、当社のコンセプトにつながっています」

労使双方のギャップを埋める

2019年には改正出入国管理法が成立し、外国人労働者の受入が拡大した。有為な労働力の受け入れは、少子高齢化を迎える日本の未来を左右する大きな転換点と言える。だが、日本で働きたいと思う外国籍人材の割合は、日本に観光に行きたいという割合に比べて圧倒的に低い、という。

「大きな要因の一つは言語の違いです。人材に求める日本語スキルが非常に高いためですが、そのほかにもいろいろな課題があります。例えば企業で働く際の価値観の違いです。基本的に日系企業は『会社のためを思って会社を大きくして欲しい』と期待する一方で、外国籍人材は基本的に『この会社に一生居続けよう』とは思いません。転職を通じて個の専門性を高めスキルアップを図っていきます。このギャップがあるため、外国籍人材を雇いながらも、組織的にフォローできず、直ぐ辞めてしまうケースが少なくありません。こうした懸念を払拭すべく、就職後のフォローアップがクライアント企業から求められています」

必要なことは何か。「労使がそれぞれの利害を声高に主張し合うのでなく、お互いが歩み寄ることが必要だと思います。さらに言えば、外国籍人材に力を発揮してもらううえでは、人材が日本企業の風土を理解するだけでなく、受入側の企業の志向が変わっていかないと難しいでしょう」

iiiis agentの目指す理想の姿と事業概要

出典:杉本氏提供資料を基に編集部作成

 

優れた人材を見出すには
MPDの多彩な人脈が活きる

「私が興した事業それ自体は、企業の人事組織・採用におけるサポートであり、決して目新しいわけではありません。修了時に執筆した『事業構想計画書』では、優秀な外国人留学生であっても日本企業に関する知識が乏しいがゆえ、有名・人気企業しか応募せず、不採用になると帰国してしまう傾向を指摘しました。

実際には、有名な大手企業以外にも、おもしろい中小企業・ベンチャーは沢山あると提案したいと考えていました。組織に入り込んでグローバル化を啓蒙したり、受け入れ体制を整えるためのサポートを実施していきました」

事業構想大学院大学(MPD)の修了生や教員から紹介を受けたこともある。「修了生の渡辺順也さん(イノベータージャパン 代表取締役社長)を通じ、計画書執筆に先立ってのヒアリングを実施しました。同社のマーケターからインドで日本語学校を立ち上げた知人を紹介してもらい、2018年に渡印した際に視察を行うなど、国内にいる外国籍の就労支援だけではなく、国外から日本を目指す外国籍人材の就職支援も少しずつ始めています」。

インド人・ウメッシュ氏が市場リサーチで来日した際は、会食の機会を持った。当初、杉本氏が日本での就業をフォローしていたが、今では日本でビジネス展開を志して起業している(2019年11月撮影)

多様な価値観に触れる
環境作りを

人材育成はやりがいに溢れる一方、事業性を確保するには、コミットメントの深さと効率性のバランスが重要になる。「クライアント企業との長期的なコミットメントが大切であることを実感しています。しばしば外国籍比率が低い日系企業では、『ローカルな(内輪での)』用語を使いがちです。これが外国籍人材には理解しがたい、あるいは、理解するのに時間が掛かってしまうため、疎外感をもたらし、早期離職の原因の一つになってしまうのです」

事業を超えた長期的な展望とは何か。「将来的には、幼いうちから色々な価値観に触れられる環境作りをしたいと思っています。住んでいる新大久保では、小学校の廊下の掲示板がアジア諸語・約10カ国語で書かれています。既に自然とグローバルな環境になっていますが、もっと学校以外での場で異文化の価値観に触れる体験ができるようなことを仕掛けていきたいと思っています」

「ここ数年は、大規模テロや移民問題などが後を絶たず、国際社会は、排除の方向が色濃く出ています。2020年に入ってからは新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大によるパンデミックが生じています。

このようなリスクの高い環境下でも、オンラインで交流をサポートする手法は有効だと感じています。むろん、リアルな交流の価値を否定するわけではなく、補いあうものとして、ツールの助けを借りながら、交流することは可能だと思います」

杉本氏は、考えを巡らせる中で、日本の強みを再び見出している。「日本は歴史的に見ても、様々な文化が混交し、『採り入れながら大きくしていく』のが良い点だと思います」。その意味での日本人らしさを重視しつつも「実際のところグローバル化の中で、多様な価値観を100%理解し合うのは難しい」と語る。「2019年のワールドカップに出場したラグビーの日本代表などは理想形の一つです。選手の背景は個々多様でありながら、『日本のチーム』という一点では強い連帯を持っている。次のフェイズに移っていけるような企業体・世界観を目指したいと思います」

 

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