TOTOの経営と人財育成の真髄
「水まわりを中心とした豊かで快適な生活文化を創造すること」を理念に、103年以上の歴史を持ち、積極的に事業展開を行うTOTO。その経営において大切なことと、理念を継承する後継者の育成について、TOTO・張本邦雄取締役相談役と、事業構想大学院大学・永野芳宣特命教授の2人が語る。
事業は「身の丈」を考え
足りない部分は外の力を借りる
永野 張本相談役は激動の世の中で、強い信念と大胆な発想で事業を切り拓いてこられました。あらためて、経営を行う上で大切にされておられることを教えていただけますか。
張本 行動原理の中で最も大切にしていることは「ロジック」と「定量化」です。閃きはすごく大切ですが、その閃きが本当に正しいかどうか、時間をかけて判断します。例えば、何かをやらなければいけない時に、「これはマズい」と思う。そういう時も、本当にマズいことなのか、なぜマズいことになってしまったのか、その"マズさ"をいろいろな数字を集め、定量化して考えます。大胆なことをやっているように見えるかもしれませんが、実は結果的にそう見えるだけで、どちらかというと僕は憶病なんです。この案件を進めるためには、何を指標にして、どんな手順で進めていくか、頭の中に構想をまとめていないと動けません。でも、あらかじめ構想して確信あるストーリーを持っているので、議論をすると非常に勝率が高いんです(笑)。だから大胆に見えるのかもしれませんね。
もう1つ好きなことばがあります。それは「身の丈」ということばです。
TOTOはいまだに「トイレの会社」だと思われていますが、本当は「便器の会社」です。しかし、お客様が求めるのは「快適なトイレ空間」で、それは"快適な便器"だけでは実現できません。かつて、自前で快適なトイレを作ろうと、トイレの暖房を便器や便座だけで実現しようとしていました。
室内暖房付きの便器は工事の手間は少なくなりますが、暖房効率や快適性を考えるのであれば、床暖房をつけた方がいいのだから。結局、あの時は自前ですべてを実現しようと「身の丈」以上のことをやろうとしていたのです。
2002年に、私が推進役となり、壁床材を扱う大建工業と窓を作るYKKAPの3社でアライアンスを組みました。これは「快適なトイレ空間」を実現するために、自社にできないことは他社の力を借りようという考えかたへの転換点になりました。そして、社長に就任して最初に、「TOTOでもできることは全部やめろ。TOTOにしかできないものだけを作れ」というメッセージを発信しました。そこに事業を集約していくことこそ、当社の生きる道をつかむことだと考えたからです。
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