「BISTRO下水道」バイオマスをフル活用で 食の基盤を強化
お洒落で気軽なイメージを持つ「ビストロ」を冠して「下水道」の先入観を刷新――。下水処理費用の低減、廃棄物利用による農業・エネルギー事業への支援、低環境負荷・循環型社会の実現など、食の新事業創出につながる、多様な価値創出を目指す。
生物由来資源や下水熱を
農業に利活用
BISTRO下水道プロジェクトは2013年から開始。下水を農業と結びつけ、新たな価値を創出する事業だ。
「下水処理からは衛生的な水だけでなく、微生物由来のバイオマス、下水自体が持つ熱なども得られます」と語る村岡氏。日本の処理技術は高い水準にある一方、過程が一般市民の目に触れることがなく財源の料金改定も難しく、運営は厳しい状況と説明する。「処理後の水は産業用水としては充分な質を持ち、一部の地域では『綺麗すぎる』と言われます。多くの公害問題を経て工業者への規制が厳しくなり、家庭から水銀体温計が減ったためです。しかし一般にはまだ『汚い』『再利用など考えられない』という印象が先立つようです。当省ではこのギャップを埋めたいと考えています」
微生物が下水から肥料を生む
下水浄化では沈殿処理後、空気と微生物の入った泥を送り込み、かき混ぜて微生物を活性化する。微生物は水の汚れを栄養源として、分解しながら増殖し、さらに分解を進める。このとき、ごく微細な汚れも微生物に付着し、一緒に取り除きやすくなる。
役目を終えた微生物は、沈殿処理で再び水と分離される。この泥は8割以上が有機物であるバイオマスとなる。
「平成27年5月に下水道法が改正され、『発生汚泥の処理に当たっては、脱水、焼却等によりその減量に努めるとともに、発生汚泥等が燃料又は肥料として再生利用されるよう努めなければならない』と定められました。主に微生物の死骸である『汚泥』に発酵処理を加えれば肥料になります。もとが浄化処理を経た廃棄物ですので、高い安全性と安価さを兼ね備え、本来の廃棄コストとの兼ね合いで、低価格に抑えることができます。肥料にする場合、農業収益によるコスト回収が見込め、事業者と農業者がWin-Winになりうる方策です」
本プロジェクトは、輸入に依存する肥料原料を下水道由来の国産肥料に置き換えることで、国内で完結する食料生産を強化、食料自給率の向上にもつながる、と村岡氏。環境省や農林水産省の政策とも合致し、リサイクル、リユース、ゴミ処理に伴う環境汚染などに市民の関心が高まるなか、高い社会貢献性をも兼ね備えている。
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