シリコンバレーVCが語るフードテック 世界で「食」の新たな潮流

今、日本人がまったく実感できていない、「食」をめぐる変化が世界で起きている――。エバーノートジャパンの元会長であり、現在はシリコンバレーを拠点に活動する外村仁氏に、米国におけるフードテックの最新動向と日本企業の課題について、話を聞いた。

外村 仁(Scrum Ventures パートナー)

急速に変化している世界の食マーケット

――外村さんはシリコンバレーを拠点にベンチャーキャピタリストとして活動していますが、フードテック(食×テクノロジー)の動向をどのように見ていますか。

外村 シリコンバレーで食が注目された契機の1つが、2010年頃からメイカーズムーブメントを牽引したメディア『Make:』において、DIYの調理器具が取り上げられたこと。ギークたちは料理を美味しくしたいというよりは、それまで未知の領域だった食の世界にDIYを持ち込み、自作の調理器具で実験を行うことに関心を持つようになりました。

さらに、2011年にマイクロソフトの元CTO、ネイサン・ミアボルトが著書『モダニスト・キュイジーヌ』を出版しました。その本が、シリコンバレーのフードテックに果たした役割はものすごく大きい。『モダニスト・キュイジーヌ』は料理を科学した本であり、例えば肉はなぜ焦げるのか、グリルの中で熱がどう伝わり、肉の形状はどのように変化しているかなど、断面図を撮影して1つ1つの調理法を分析しました。それは、ギークたちに「料理はサイエンスだったんだ」と目を開かせ、プログラマーたちが食の分野に注目するようになったんです。

また、米国全体の動向を見ると、この1~2年、食の消費に大きな変化が起きています。昨年くらいから肉を食べない若者が急激に増えました。グレタさんが若者に支持されることにも通底すると思いますが、若者が肉を食べないのは、美味しくないから、健康に良くないからではなく、それが地球にやさしくないと考えているから。そうした若者の増加は、米国だけでなく日本以外の多くの先進国で見られます。

今、こうしたマーケットの変化をチャンスと見て、スタートアップが殺到しています。象徴的なことが、ラスベガスで開催される世界最大規模のエレクトロニクス技術の見本市「CES」でありました。CESは今流行しているものを展示するのではなく、これからのビジネスの方向性を示す場ですが、2019年のBest of CESを獲得したのは、大豆を使った植物由来の肉を手掛けるフードテックベンチャー、Impossible Foodsでした。

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