Jフロント社長 非連続な成長へ、社内を「発明体質」に変える

「大丸」「松坂屋」の百貨店事業のほか、パルコ事業などを展開するJ.フロント リテイリング。近年は「GINZA SIX」などで脱百貨店に挑むとともに、社内に「発明体質」を浸透させ、小売業の枠を超えた成長を目指している。同社のビジョンと戦略について、山本良一社長に話を聞いた。

山本 良一(J.フロント リテイリング 取締役 兼 代表執行役社長)

過去に縛られず、新たな成長へ

――百貨店をめぐる現在の経営環境について、どのように見ていますか。

山本 百貨店業界の売上高のピークは1991年で、約9兆7000億円でした。しかし、2018年には約5兆8600億円と約6割の水準に落ちています。その根底には、消費者の生活意識の変化や多様化があります。ノーネクタイで働く人が増えるなど、カジュアル化の傾向も一因です。家計消費支出に占める「被服及び履物」の割合は、1991年は7.3%。それが2018年には3.8%に低下しました。「被服及び履物」は百貨店にとって重要な商品ですが、その消費マインドが落ちています。

また、所得の二極化も進んでいます。年収1000万円超と300万以下の層が増えて、ボリュームゾーンとなる中間層が減っています。さらに、「一人二極化」とも言えるような動きもあり、同じ人が趣味や旅行など特定分野には思い切ってお金を使う一方で、普段の食事や衣服は節約するなど、メリハリの効いた消費傾向も強まっています。

競合も変化しています。郊外ショッピングセンターやアウトレットに加え、ECやシェアリングエコノミーが拡大し、多様なチャネルで買い物をする人が増えています。

こうした認識の下、J.フロント リテイリング(JFR)は過去の延長線上にはない「非連続な成長」へと大きく舵を切りました。江戸時代に誕生した呉服商は、時代の変化に対応すべく100年余り前に百貨店へと大きく変貌を遂げました。現在、かつて呉服商が百貨店へと転換したのに匹敵するような、経営環境の大きな変化が起きています。

過去100年の成功体験が、これから50年先、100年先も通用するかと言うと、それはあり得ません。我々は過去の成功体験にとらわれず、新たな事業領域を拡大していきます。

百貨店ビジネスモデルを変革

――非連続な成長に向けて、百貨店のビジネスモデルをどのように変革していくのですか。

山本 新しいビジネスモデルに挑戦した最初の事例が、2017年4月に東京・銀座で開業した複合商業施設「GINZASIX(ギンザシックス)」です。

「GINZA SIX」の前身、松坂屋銀座店は約90年の歴史を持つ百貨店でした。そのまま百貨店としてリニューアルするという選択肢もありましたが、先程申し上げた大きな環境変化の中で、私は「百貨店はやらない」と決めました。そうした決断を下すのは、経営者の役割です。従来の百貨店は、モノを仕入れて販売する小売事業ですが、「GINZA SIX」はテナント賃料で収益を得る不動産事業のビジネスモデルへと転換しています。

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