インバウンドB to B 海外企業向け団体集客で消費拡大

政府が訪日外国人旅行者数やその消費額増加で目標を掲げる中、その新たな手段として、電通アドギアは海外企業を対象とした「インバウンドBtoB」の促進を提案する。企業にとって魅力あるツアーを提供することで、地域活性化につなげていく。

地域活性化につながる
海外企業向け団体集客

政府は2020年に訪日外国人旅行者数を4,000万人とし、その消費額を8兆円とする目標を掲げている。目標達成に向けて全国の自治体ではインバウンドに関する様々な活動を展開しているが、その主なターゲットは個人旅行者、個人集客となっている。

「現在、2020年に4,000万人という旅行者数の目標達成は見えてきましたが、消費額の方は課題となっています。このような中、消費額を上げていくための1つの考え方として、私たちは『インバウンドBtoB(団体集客)』に新たなニーズやチャンスがあると考えます」

電通アドギア 常務取締役の遠藤氏は、こう語る。電通グループの広告会社である電通アドギアは、広告・プロモーション全般を事業領域としている。インバウンドBtoBは、一般に「MICE」と呼ばれる。MICEは企業等の会議(Meeting)、企業等が行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字で、これら4つのカテゴリーから構成される。国内で一般的に行われているMICEは、ホテルの広間でどこにでもあるような立食パーティーを開くといったものだ。しかし、海外のエンターテインメント性が強いMICEに慣れた参加者からは、「日本は遅れている」という指摘もなされる。

遠藤 弘暢 電通アドギア 常務取締役

日本が誇る「コト型消費」が
インバウンドの心を掴む

「インバウンドBtoBの促進は、自治体が現在、個人集客に費やしている労力や時間を大きく変えることなく取り組めます。ですから、自治体の負担を増やさずに、訪日外国人旅行者数やその消費額を増やすための有効な考え方だと思います」と電通アドギア未来デザイン室 チーフ・プロモーション・ディレクターの木村氏は話す。

個人旅行者は自らの財布を使って旅行するため、交通手段や宿泊先、食事の選択も財布と相談しながら行うが、インバウンドBtoBで中心になるインセンティブツアーや研修旅行は基本的に企業が実施し、費用を負担する。したがって企業がそのツアーや体験に価値があると受け止めれば、大きな消費額も期待できる。

さらに、参加する社員らは土産物やプラスアルファの体験、「アフターMICE」の飲食などで、会社の負担とは別に自分の財布を使うことになる。「これら2つの財布が使われれば、地域における消費額向上にも大きく貢献するはずです」と木村氏は指摘する。

木村 貴光 電通アドギア 未来デザイン室未来デザイン部 チーフ・プロモーション・ディレクター

「日本のMICEはハード型が主ですが、個人向けのインバウンドはソフトオリエンテッドになってきています。日本のコト型消費は外国人旅行者に好評で、私たちはこれをB to Bに活かせばボトムアップ型の新しい日本のMICEができると考えています」と遠藤氏は言う。同社の事業領域である広告・プロモーションはソフトオリエンテッドに立ちやすい業態で、その発想やノウハウ、ネットワークはインバウンドBtoBの企画にも活かせるという。

和太鼓演奏や座禅体験が
コンテンツに活かせる

木村氏は以前、アルコール飲料のプロモーションの一環として、商品の良さを伝えるためのオリジナルの旅行を開発し、当選者にその思い出や体験と共にその商品を好きになってもらう企画を行った。インバウンドBtoBに関する企画も、これと共通する部分があるという。

インバウンドBtoBのインセンティブツアーは、例えば「チームビルディング×日本の文化・歴史」というコンセプトで、福岡県のお寺での和太鼓演奏やまち歩き、能楽や座禅体験を組み合わせたツアーが考えられる。静かで落ち着いた雰囲気で、メンバーらが意見を出しやすい環境を作る。

和太鼓や座禅という体験型コンテンツが「チームビルディング」という側面からも海外から注目を集めている。きめ細やかなプランニング力によって、地域の何気ない観光資源を「ここでしか体験できないツアー」に仕立てることが可能だ

他には、農村ツーリズムや企業・工場見学、福利厚生や健康診断、チームでの登山など、様々な企画が想定される。日本人がなかなか価値に気づかない体験も、外国人や海外企業にとっては「宝の山」かもしれない。

企業のグローバル化で様々な文化や背景を持つ人々が同じベクトルに向かって仕事をしなければならない時、言葉を必要としないノンバーバル(非言語)コミュニケーションや、1つの経験を皆で一緒にすることがより重要になる。同様のニーズは終身雇用が変化しつつある日本企業の間でも、今後高まる可能性がある。

「最終的には値引きをしない適正な価格で、海外のニーズを持つ方々にダイレクトに販売する仕組みを整えたいと考えています。適正価格での販売は、地域経済の活性化にもつながるはずです」(遠藤氏)

個人旅行とは異なり、企業を対象とするインセンティブツアーやチームビルディングでは、ツアーは「手段」となり、終了後に効果を出すことが「ゴール」になる。ツアーを通じて、参加者らの結束が深まったというような効果が出れば、「うちの部も行ってみよう」、「協力会社にも紹介しよう」というように、従来とは異なる口コミの伝わり方になることも予想される。

インバウンドBtoBは、オリンピック・パラリンピックや万博などのビッグイベントとは異なり、あらゆる地域で実施可能だ。その際、個人客のインバウンドに向けて整備したインフラやコンテンツを使うこともできる。

電通アドギアでは、中国のグループ企業を通じ、中国や台湾の企業に向けた販売を進めている。中国と台湾は訪日外国人旅行者数に関しても重要な地位を占めており、今後はこれらの地域を皮切りに販売を促進していく方針だ。

 

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