多様な人々の交流を促進 関係人口増加がメルクマール

全国的な総合施策として地方創生を進めたまち・ひと・しごと創生。第2期には、都市と地方を行き来する多様な「関係人口」を増やし、成功している地域のノウハウを展開することが重要になる。さらに、高校生以下の子ども時代から、地域とのつながりを作るアプローチも拡大される。

小田切 徳美(明治大学大学院農学部 教授)

農村の人口減少と、都市への一極集中が問題になり始めてからおよそ半世紀が経つ。数十年にわたり実施されていた過疎対策や地域活性施策だが、2014年のまち・ひと・しごと創生本部の開設と「まち・ひと・しごと創生法」の成立により、国が総合的に取り組むべき重要課題となった。同本部の第2期総合戦略策定に関する有識者会議委員を務める明治大学大学院農学部教授の小田切徳美氏は「問題が提起されてからわずか数カ月で政策化を達成したことは、第1期の地方創生の成果です」と振り返る。

一方、短期間で立ち上げた弊害もあった。政策を実行するための地方創生交付金を獲得するため、第1期の地方版総合戦略を大急ぎで作成した自治体は多い。「本来、地域づくりは住民の意見に基づき、ボトムアップで行われるべきもの。しかし時間不足で、外部に委託するなどして地域の魂の入っていない総合戦略を策定した自治体もありました」(小田切氏)。

第2期は、2019年6月に国の基本方針が公表され、国の総合戦略の公表は2019年末になる。各自治体は、国の動きを見ながら来年度からの戦略を考える時間が与えられた。「第2期は、住民の考えを全面的に反映した総合戦略を各自治体で作成してほしい」と小田切氏は言う。

関係人口と横展開が2期のポイント

それでは、第2期の地方創生で、大切なポイントは何だろうか。多くのトピックを網羅した基本方針を議論する過程で、小田切氏が注目したのが、人材育成と自治体間のシステマティックな横展開だ。

第1期の自治体総合戦略は、地方人口ビジョンを作成して将来の人口減を客観的に把握した上で立案された。このため、住民の「数」へのこだわりが見られた。しかし地域づくりにおいて、重要なのは人材の活躍である。実際に、都市部に家を持つが、折々に帰省して家業を手伝う人からワーケーションのITエンジニアまで、住民票を移さなくても、地域コミュニティを構成する人々が存在する。小田切氏は、「住民の人口が減っても、いろいろな人が地域に滞在し、新しいコミュニティが生まれています。このような地域の人材の増加・育成は、第2期において重視すべき指標です」と指摘する。

まち・ひと・しごと創生基本方針2019では、「関係人口」の創出・拡大を提案している。ここでの関係人口は、移住候補者や、副業・兼業で仕事として地域に関わる人だけでなく、ふるさと納税をした人、修学旅行や移動教室で地域を訪問した子どもまでを含む広い概念となっている。このような関係人口を増やすためには、地域の側で「どのような形で地域に関わってほしいか」、すなわち「かかわりしろ」を明確にする必要があると小田切氏は言う。

例えば、地域の特定の課題解決のために外部の人材に協力してほしいのであれば、どのような人が必要なのかを明確化し、提示する。もし手を挙げてくれる人がいれば、その人は課題解決に協力してくれる関係人口となる。これを可能にするために、課題を認識し、分析し、セグメント化するといった一連の作業を地域で行っていく。「地域の課題は、地域が一番わかっています。このような分析は大変なように見えますが、コツを掴めば難しくはありません」。

また、地域と域外住民をマッチングする場として、コーディネート拠点を全国に展開することも、国の基本方針は提案している。都市住民と地域のつながりをサポートする機能を持つもので、特定地域との継続的なかかわりを持ちたいと考える都市住民をつのり、継続的にケアしたり、副業・兼業として地域に関わる人材を募集できる案内所・案内人を置くことを想定している。

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