庄内を「食の都」に 世界が認める食のイノベーター

山形・庄内には豊富な食材があり、鶴岡市は日本で唯一、「ユネスコ食文化創造都市」に認定されている。しかしかつては、その魅力は地元でも評価されていなかった。一人のシェフが地元の食材に新しい光を当て、庄内を「食の都」へと牽引した。

在来野菜や魚介類をはじめ、豊富な食材に恵まれている山形・庄内。奥田氏は、それぞれの食材の個性を最大限に引き立てる、独自の調理法を編み出した

奥田 政行(アル・ケッチァーノ オーナーシェフ)

四季折々の豊富な食材に恵まれ、「食の都」と称される山形・庄内地方(鶴岡市、酒田市等からなる山形県の日本海沿岸地域)。2014年12月には、鶴岡市がユネスコの世界創造都市ネットワーク食文化部門の認定を受けるなど世界的にも認められ、「食」が原動力の1つとなって、庄内地方は県内で最も多い観光客を集める地域になっている。

しかし、かつて庄内地方の食材の魅力は地元でも評価されておらず、外に向けて発信されることもなかった。そうした状況を変え、食による地域活性に大きく貢献したのが、鶴岡市のイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ、奥田政行氏だ。

暗闇の中で見つけた小さな光

「地元にとっては身近な食材で、安価に入手できて普段から家庭で食べているから、その魅力に気づきにくいんです」

そう語る奥田氏は鶴岡の高校を卒業し、東京で料理人として修業した後、帰郷してホテルや農家レストランの料理長を務める中で、地元の魅力を再発見した。

しかし、奥田氏はその時代を振り返り、「21歳からの10年間は暗闇の中にいた」と振り返る。奥田氏が21歳の時、実家のドライブインが廃業。その借金問題を引きずりながらの料理人修行であり、家族全員が消費者金融の限度額まで借りたこともあった。奥田氏が、八方ふさがりの暗闇の中で見つけた小さな光。それが地元の食材だった。

「光を見つけたら、真っ直ぐにそこへ行く。自分の道を進んでいると、何もやらない人から馬鹿にされたり、誹謗中傷を受けたりしますが、それには一切耳を貸さない。『日々起こることは、宇宙の営みからすればほんの小さなこと。でも、そこに喜びが生まれたら、それは何にも代えがたい大きなこと』です。自分が正しいと思ったことを正しいと思った方法でやる。考えているだけでは駄目で、きちんとカタチにすることが大事です」

奥田氏は2000年3月、31歳の時に150万円の手元資金で「アル・ケッチァーノ」を友人と開業した。同店は、庄内の食材をふんだんに取り入れた「地場イタリアン」だ。

「それまで地元の食材を使ったイタリアンはありませんでした。誰もやったことがない独創的な料理をつくらないと、お客様は来ないと考えたんです」

しかし当初は知名度もなく、経営は苦労の連続だった。資金繰りに余裕がないため、自ら山に入って山菜や野草を集めていたこともあったという。

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