オムロン 健康増進へデータ蓄積、人の行動を変えるサービス開発

「健康と福祉」は、人の生命の根幹にかかわる領域だ。ライフスタイルの変化で生じる新たな健康課題を分析し、社会的課題の解決に取り組んできた。豊富なデータ蓄積と経験に基づくノウハウは、どのようなイノベーションにつながるのか。

血圧計の進化

オムロン統合レポート2018を基に編集部作成

 

写真提供:国連広報センター

「はかる」を通じ
世界中の一人ひとりの健康を増進

オムロンヘルスケアはオムロンが100%出資する子会社で、京都・向日市に本社を置く。「オムロングループは様々な事業ドメインに取り組んでいますが、オムロンヘルスケアで取り組んでいるヘルスケア事業は『すべての人に健康と福祉を(SDG3)』に対応しています。(富田氏)。

具体的にはどのような事業に注力しているのだろうか。「2020年を達成年度として掲げた『VG2.0』という中期経営計画で、オムロンヘルスケアとして注力する3つの事業領域を設定しました。1つ目が生命の存続や大幅なQOL(クオリティ・オブ・ライフ)低下につながる脳・心血管疾患の原因である高血圧を予防・改善する循環器事業、2つ目が小児喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器系疾患のソリューションを提供する事業、3つ目が関節痛・腰痛などを寛解してQOLの維持向上を実現するペイン・マネジメント事業です。オムロングループは創業以来、事業を通じて社会の発展と人々の生活の向上に貢献してきました。

オムロンヘルスケアでは『医療費の増大抑制』という社会的課題の解決を目指しています。もっとも医療領域における課題は、各国の生活水準や社会システム(法令・規制)と密接に関係しています。先進国では、超高齢化社会の到来に伴い、健康寿命と生命寿命のギャップが拡大しており、医療費が増加する要因となっており、このギャップをいかに近づけるかが課題となっています。また、新興国においては、社会発展に伴う中間層の拡大により、そのライフスタイルも急速に変化しており、高血圧などの生活習慣に起因する『生活習慣病』を患う人口が急拡大しています」(富田氏)。

オムロンのヘルスケア事業の前身となる研究部門は1961年に新設され、1973年に血圧計第1号が発売された。「当時は『血圧は医療機関で測るもの、家庭で測るなど以ての外』という通念がありました。それが、血圧計の普及が拡大して、家庭血圧のデータが膨大に蓄積され始めると、その臨床研究が進み、高血圧治療のおける家庭血圧測定の有用性が確認され始めました。その結果、2014年の高血圧診療ガイドラインの改定で、家庭での血圧測定が正式に盛り込まれました。実に40年を経て、家庭血圧が市民権を得るに至ったわけです」(富田氏)。

一方で、新興国においては、同じ家庭血圧でもその状況は大きく異なる。「そもそも、新興国では生活者において『家庭で血圧を測る』という意識が希薄なだけでなく、医療従事者の理解もあまり進んでいません。当社としてはまず専門家向けに家庭血圧の有用性を伝えるセミナーを開催し、データの計測と記録を市場へ広める基盤づくりをしています」(中島氏)。

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