ツムラが挑む漢方のイノベーション 中国の伝統薬事業でNo.1へ

漢方医学の伝統を守り、革新を続けてきたツムラ。2016年に発表した新中期経営計画では、「"漢方"のイノベーションによる新たな価値の創造」を掲げた。125周年にあたり、中国企業との提携からも見える、「新たな価値の創造」とは。

加藤 照和(ツムラ 代表取締役社長)

「自然と健康を科学する」を深化

「漢方医学」は5~6世紀頃に中国から伝わり、江戸時代中期に医学として体系化され日本独自の伝統医学として大きく発展しました。しかし、明治時代に医師免許は西洋医学だけになり、漢方は排斥された歴史があります。当社は「津村順天堂」として創業し、漢方の衰退・逆風を経て、関東大震災や太平洋戦争など会社存続の危機を乗り越えながら、「漢方の復権」に向け研究を続けてきました。そして1976(昭和51)年に医療用漢方製剤が薬価基準に収載され、健康保険制度の中に組み込まれるようになりました。創業125周年にあたり、創業の想いを受け継ぐ者として、この事業の持つ価値と、社会に果たす役割を振り返らなければならないと思っています。

――自然の恵みを生かした薬、漢方の特徴について教えてください。

西洋医学は、他覚的所見を重視し検査データを基に病名を決め治療することを重要視します。それに対し、漢方は患者様全体を診て体全体のバランスを整えることを目指します。検査で異常がないような症状でも原因を探って治療することが可能です。複数の生薬の組み合わせでできているため、一剤でいろいろな症状に対応できる場合もあります。

例えば、漢方には「利水(りすい)」という概念があり、利水剤と呼ばれる漢方薬は、過剰な水を外に出すだけでなく生体内に水が偏在している場合には、偏在を是正します。このように生体のバランスに応じて作用するという発想は、西洋薬にはありません。

――漢方は何種類販売し、原料はどのように調達しているのですか。

当社が製造・販売している医療用漢方製剤は129品目で、その原料となる生薬は119種類あり、8割を中国から調達しています。

中国での生薬の調達は、日中が国交正常化したすぐ後の1978年、漢方の需要拡大を予見した2代津村重舎が中国政府と直談判し、さまざまな困難を乗り越え農家への生産委託が始まりました。国内栽培も推進していますが、中国の気候や土壌でないと育たないものが多く、中国の皆様のご協力がなくては、漢方薬を日本の患者様に供給することはできない状況です。

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