2019年3月号
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地域特集 静岡県

1km先まで届くLED照明装置 光で工場の安全性を高める

池田 貴裕(パイフォトニクス 代表取締役)

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ホログラフィの研究者が、研究成果をもとに起業したパイフォトニクス。独自に開発した照明装置に活路を見出し、ユーザーの要望をもとに用途を拡大、製造現場の安全性に貢献する。光を利用したメディアアートや、スタートアップによる地域振興に協力している。

池田貴裕 パイフォトニクス代表取締役

パイフォトニクスは、浜松市にあるLED照明装置「ホロライト」のメーカーだ。ホロライトは、立方体の箱の中にLED光源を置き、レンズを取り付けた構造になっている。レーザーのような高い指向特性を持ち、ターゲットとなる領域のみに光を当てることができる。

光学研究者が作ったベンチャー

創業者で代表取締役の池田貴裕氏は、元・浜松ホトニクスの研究者だ。徳島大学工学部光応用工学科の1期生として修士号を取得した後、浜松ホトニクスに就職。ホログラフィの研究を担当し、研究所ではホログラムを見るヘッドマウント・ディスプレイを開発した。バイオ研究に使えるホログラフィック顕微鏡の開発のため、米マサチューセッツ工科大学に派遣されていた時期もある。

しかし、「もともと、製品の研究開発から販売までの全てをやってみたいと思っていましたが、大企業ではそれは無理。米国から帰国するタイミングで、光産業創成大学院大学が開学されたので、2期生として入学し、研究成果の事業化を目指すことにしました」(池田氏)。

光産業創成大学院大学は、光技術をベースに、起業家を育成する博士課程のみの大学。池田氏が当初想定していたのは、米国で研究していたホログラフィック顕微鏡の事業化だ。これは、透明なガラスや光学素子、細胞膜の硬さなどの定量情報を非侵襲的に測定できる手法として先駆的なものだった。しかし、売上を得ることは容易ではない。2006年10月の創業後、数カ月間は、月に1、2回の計測受託でしのいだという。

現在の主力製品であるホロライトを製作したのは、2007年夏のこと。ホログラムを作っている人たちからの要望と、ホログラム・ヘッドマウント・ディスプレイの開発経験をベースに、1週間で試作品を作った。「試作品のライトを、1km先の山腹に向けたらちゃんと光が届いたのです。これは何かに使えると思いました」。試作機をブラッシュアップして販売用に30台を製作し、ホログラフィック・ディスプレイ研究会で販売したところ、完売した。手ごたえを感じ、静岡県、浜松市、中小企業基盤整備機構が整備した、ものづくり企業向けのインキュベーターである浜松イノベーションキューブに移転。ホロライトを事業の核に据えた。

この時点では、ホロライトには明確な用途はなかったと言ってよい。装置の使い道は、周囲の意見を聞きながら増やしていった。例えば、ホロライトの光は、平面上の小さい凸凹や傷、ホコリでも目立たせる性質がある。「この性質を利用すれば、金属表面の検査に使える」というアドバイスを得、自動車の外装の検査向けに販売を始めた。各種の展示会に積極的に参加し、ユーザーの需要や要望をさらに探っていった。また、虹色の半円を作れる「ホロライト・レインボウ」のように、池田氏のアイデアで作った製品もある。

ライトアップ向けの利用は、2009年に浜松市内の観光地、大草山でのイベントにホロライト300台を提供してからだ。LEDを使用していることから、少ない消費電力で、広い範囲を照らすことができた。想定よりも明るく、インパクトのある景色が広がったことで、周囲の見る目が変わったという。ライトアップへの参加で、エンターテインメント業界からの問い合わせが増えた。例えば、年末の歌謡番組の演出に使われているレーザー風の照明はホロライトだ。

2017年に開設した自社ビル。夜間はホロライトでライトアップしている。内部のイベントスペースではベンチャー企業の会合も開催

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