自治体経営を一変させる、データに基づいた政策立案「EBPM」

少子高齢化が加速し、地域課題・ニーズの多様化や自治体職員の減少が深刻化している今、自治体のデータ利活用の促進、特にデータに基づいた政策立案(EBPM)が重要である。富士通はEBPMを実現する豊富な技術と知見を活かし、自治体の挑戦を伴走支援していく。

政府が2018年6月に策定した「世界最先端デジタル国家創造宣言」では、地方のデジタル改革が重点取り組みの1つに掲げられた。クラウド導入のほか、オープンデータやシェアリングエコノミーの推進、データ利活用型のまちづくりの推進などが具体的な項目として挙げられている。

データ利活用への取り組みが自治体には強く求められているが、本格対応はこれからだ。「オープンデータを公開する自治体は増えていますが、官民データ活用推進計画を策定済の自治体は一握りにすぎません。行政データを施策立案等に活用する取り組みは、個人情報保護のハードルが高いこともあり、先行自治体で実証が始まった段階です」と富士通の桑村佳代氏は述べる。

桑村佳代 富士通 公共・地域営業グループ 官庁・地域次世代ビジネス推進部

このため、富士通は自治体データ利活用に関するサービスやソリューションを整備し、包括パッケージとして提供を始めた。具体的には①官民データ活用推進計画の策定支援、②データ抽出・分析、③オープンデータカタログサイト構築、④匿名加工情報提供、⑤データ利活用プラットフォーム構築、という5つの領域を設定し、自治体のニーズに対応している(図参照)。

図 富士通の自治体データ利活用ソリューション

出典:富士通

 

「官民データ活用推進計画の策定は都道府県で義務化、市町村では努力義務化されましたが、IT人材の少ない中小自治体にとっては、KPIを盛り込んだ計画を立てるのは簡単ではありません。弊社はデータ活用だけでなくAIやRPAの導入を含め計画策定をサポートしていきます」と桑村氏。

EBPMで自治体経営が変わる

中でも富士通が重視しているのが、データに基づいた政策立案=EBPM(Evidence Based Policy Making)の環境構築支援だ。EBPMとは、自治体庁内に存在する各種データに加えて、オープンデータや民間データをかけ合わせて分析することで、地域課題の可視化や客観的根拠に基づいた政策立案を実現するものだ。

「これまで自治体の政策立案や検証は、職員の経験やスキル、勘に依存しがちだったと思います。住民情報や税、福祉などのデータを分析し、客観的根拠に基づいた政策を検討・立案できるようになれば、住民への説明責任を今まで以上に果たし、サービス向上や業務効率化、コスト削減に繋げられるはずです」と桑村氏は強調する。

EBPMの機会は、健康・医療・福祉からインフラ、観光、産業活性化などあらゆる領域に及ぶ。例えばインフラならば、道路の劣化状況や交通量、竣工年数などのデータを活用して道路修繕計画を最適化することなどが考えられる。生活実態に合わせた公共交通機関のルート策定、動態データの観光マーケティング活用、住民属性に基づく子育てサービス提供なども、地域課題の解決や地方創生につながるだろう。

「EBPMによって政策の因果関係を明らかにすることは極めて重要です。ある県では男性の健康寿命が全国上位なのにも関わらず、女性の健康寿命が全国中位に留まっています。なぜ男性の健康寿命が長いのかをデータに基づいて分析できれば、女性の健康寿命も伸ばすことができ、医療費削減につながるかもしれません」と富士通官庁・地域次世代ビジネス推進部部長の天野隆興氏は言う。

天野隆興 富士通 公共・地域営業グループ 官庁・地域次世代ビジネス推進部 部長

自治体と協業し、成果を全国展開

富士通は現在、全国のさまざまな自治体と連携し、EBPMの実証を進めている。

ある自治体では富士通のデータ分析ツールを活用し、業務システムデータをベースとしたデータ分析ダッシュボードの運用を始めている。その一つが「滞納ダッシュボード」で、地方税などの滞納状況とその要因をデータ分析し、納付率向上のための政策立案に役立てていく方針だ。

11月には滋賀県大津市と富士通で連携協定を締結し、子育て支援の領域でEBPMの有効性を実証していく。育児女性の就業者数上昇という最終アウトカムに至るためのデータ分析シナリオを策定、シナリオをもとに収集したデータを匿名加工し、ダッシュボードを開発して政策検討などへ活用する予定だ。「個人情報保護とデータ利活用は表裏一体であり、同時に自治体にとって一番ハードルが高い分野です。弊社は匿名加工ツールやプライバシーリスク評価ツールを開発しており、大津市ではこれらを活用しセキュリティを担保した上で、EBPMを実証します」と桑村氏。

データ利活用ソリューションを提供するITベンダーは複数あるが、富士通の強みは自治体業務基幹システムで高いシェアを誇り、営業スタッフやエンジニアが自治体の業務や課題をしっかりと把握していることだろう。また、「弊社は大学や病院、金融機関の業務システムも多数提供しています。庁内データ利活用の先にある、民間と連携したデータ利活用やオープンイノベーションにおいて、この強みが活きると考えています」と天野氏は話す。

実際に愛媛県松山市では、市や愛媛大学、地域金融機関、愛媛県法人会連合会とともに、地場産業活性化のためのデータ利活用の実証を開始する。国や松山市が保有する企業データを使い、成長企業の金融支援やマッチング支援を高精度で実現することを目指す。

「EBPMへの取り組みはまだ始まったばかり。弊社は自治体との実証を通じて、政策分野ごとにEBPMの成果を見える化し、同じ課題を抱えている全国の自治体に横展開をしていきたいと考えています」と桑村氏は言う。地域課題や住民のニーズが多様化し、自治体職員定数も減少する中で、EBPMへの取り組みは待ったなしだ。

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