珍魚「ワラスボ」を発信 逆境を逆手にとる佐賀市のプロモーション

一瞬のバズに終わらない、ユニークなシティプロモーションを連発する佐賀市。外部の目を取り入れたキャンペーンを実施し、地域の埋もれた魅力を発掘。それが地域の元気の源になり、次につながる好循環を生んでいる。

三寺 雅人(アサツー ディ・ケイ エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)

プロモーションに起用されたワラスボ

ワラスボでつかんだ手応え

三寺氏は、シティプロモーションサミット2018 in佐賀の講演会場で、「5年前に佐賀市を訪れ、シティプロモーションの重要性を市長や自治体担当者にお話ししたことを思い出します。それが佐賀市のプロモーションを手掛ける始まりとなりました」と振り返った。

2013年に講演した際、佐賀在住の人からのフィードバックは「佐賀には何もないよ」だったという。しかし、三寺氏は、佐賀市と協力して毎年コンスタントにプロモーションを実施してきた。ノウハウを蓄積した佐賀市は、2017年には、「進撃のプロモーションガイド佐賀市」をまとめ、他の自治体の参考となる事例を提示するまでにプロモーションに習熟した。

「動画を1本作っておしまい、ではなく、佐賀市をスタートアップ企業のようにとらえ、ともに成長していくことを目指しました。それが、地域の価値を上げる継続的なプロモーションにつながったのではないかと考えています」と同氏は話した。

今回のサミットで、三寺氏は、佐賀市が実施してきたキャンペーン事例を紹介した。まずは、2015年1月に開始し、佐賀市のシティプロモーションがブレイクするきっかけとなったともいえる、ワラスボを用いた動画キャンペーンだ。ワラスボは、丸い頭、退化した目、鋭い歯を持つエイリアンのような外見のハゼの一種。日本では有明海にのみ生息し、佐賀市では刺身や干物などとして食用にされている。

インパクトのある魚をテーマにした動画はメディアでも取り上げられ、ゲームとコラボレーションもした。さらに、ワラスボ料理を出す市内のレストランに、サイトやリーフレットで観光客を誘引。お土産として販売されていたワラスボの干物は1年で10倍になった。メディア露出を広告費に換算すると約3億円、キャンペーンは成功したといえる。

「佐賀在住の方からは、当初『こんな気持ちの悪いものを広告に使うの?』という意見も出ました。しかし、外部の目で見ると、ここにしかいないワラスボは魅力的でした。地域の外からの意見を一度、聞いていただくということは、シティプロモーションにとっては重要だと思います」。

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