名古屋大学・総長が語る 産業創出を牽引する「新しい大学モデル」

世界レベルの製造業集積地である東海地域の強みを生かしたビジョンとして、「Tech Innovation Smart Society」を打ち出した名古屋大学総長の松尾清一氏。大学をハブにし、国・自治体や産業界を巻き込んだイノベーション創出の取り組みについて話を聞いた。

松尾 清一(名古屋大学総長)

――「Tech Innovation Smart Society」の概要をお聞かせください。

『第4次産業革命』とも呼ばれる急速な産業構造の変化や技術革新が進むなか、名古屋を含む東海地域が将来にわたり永く繁栄していくためには、地域の大学が国公私の枠を超えて連携した大学連合体となり、これを核に国、自治体、地域の産業界が連携して「Society 5.0」の実現、「Tech Innovation Smart Society」を目指すことが必要です。

というのも、20世紀の半ばから現在までの愛知県は、世界に名だたる製造業が集積したことで、経済的に最も成功した地域のひとつと言われるほどの発展を遂げましたが、この先も繁栄が続く保証はありません。アメリカでは、名古屋と同じように自動車産業を中心に栄えていたデトロイトが「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と揶揄されるまでに衰退してしまいました。その後、ラストベルトから生き返ったピッツバーグではカーネギーメロン大学が、アリゾナではアリゾナ州立大学が中心となって地域を活性化しました。つまり、大学と大学発ベンチャー、企業、自治体が結びつき、イノベーションをもたらす人材を生み出すことが、AIが活躍するスマート化社会で生き残るカギだということです。

では、東海地域の産業界に活力が残っているうちに、イノベーション人材を育成し、彼らが活躍できる場を創出、アカデミアが持つシーズを実用につなげるマッチングを増やすにはどうすればいいのか。産業だけではなく、教育分野でも県をまたいだ経済圏で産業界を捉え、基礎研究の実用化や産学連携などを考えていくべきだと思います。世界との競争を意識するなら、なおさらです。

ひと昔前ならシリコンバレーのような郊外がベンチャーのメッカでしたが、いまはニューヨークシティのような都市型ベンチャーに勢いがあり、私たちにとっては良い見本です。しかも、東海地域は製造業がまだまだ元気なので、工場や研究所などが多くあり、名古屋という大都市にはアートや文化もある。そして、知の源泉たる大学もある。これらを組み合わせれば、新しい産業構造への転換を引き起こせるのではないでしょうか。

図 新しい大学モデルと持続的かつ先導的な東海地域

ものづくり産業が高度に集積する東海圏において、大学・産業界・地域の発展の好循環モデルを創出する新しい大学モデルを構築

出典:名古屋大学

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