大和証券グループ・中田社長が語る 社会貢献で事業課題も解決

証券業界を牽引する、大学・地域金融との連携をはじめいち早く「Passion for SDGs 2018~大和証券グループSDGs宣言~」を発表するなど、事業を通じた社会課題の解決にも取り組んできた足跡と展望を語る。

聞き手: 田中里沙(事業構想大学院大学 学長)

 

中田 誠司(大和証券グループ本社 代表執行役社長・最高経営責任者)

――"Passion for the Best" を理念に掲げ、経済活動に人の思いを重視する点が印象的です。

"Passion for the Best"は2006年に策定した中期経営計画"Passionfor the Best"2008から掲げていますが、反響が良く、今も継続して使用しています。すべての社員たちに、仕事・人生のいずれにおいても、社会貢献についても、あらゆることにおいて情熱をもって取り組んでほしいという思いを込めています。

AI、フィンテック(Fintech)など、金融業界・証券業界にも新しい波が来ていると言われていますが、使うのはすべて人間です。どんなに技術的に優れていても人間にとってオーバースペックだと誰も使いません。人間が利便性を持って使えるということと技術革新のスピードが合っていないといけない。イノベーションは人間社会を豊かにするためにあります。使う側のスピードに合わせて技術革新がうまくアジャストしていかないと、世の中は変わっていかないと思います。

――東京大学との産学連携で、投資における「次世代運用テクノロジー」の開発に取り組まれています。

かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、1989年は世界の上場会社の時価総額トップ30のうち21社を日本の企業が占めていました。ところが残念ながら現在の世界のトップ30に日本の企業はゼロ。Google、Facebook、Amazonなど、30年前には存在していなかった企業が上位に並んでいます。すべてが産学連携ではありませんが、ベンチャーから新しい企業を興し、価値を高め、世界トップ30を席巻している。翻って日本でも2000年にITバブルがあり、楽天、サイバーエージェントなどのIT企業が上場し活躍していますが、日本はもっとスタートアップ企業によるイノベーションを起こしていかなければいけません。

アメリカのシリコンバレーでは、元々スタンフォード大学の周辺に情報テクノロジー企業が出てきて発展してきましたが、日本にはそういうところがない。そこで、2016 年、東京大学とタッグを組み、「東京大学本郷テックガレージ(大和証券グループ寄附プロジェクト)」を設置しました。

産学連携という言葉が出てきて久しいですが、今からでも証券会社としてのサポートができれば、将来的には日本からシリコンバレーに代表されるような企業を創出できるのではないか。現在は主に東京大学と協働していますが、早稲田大学や慶應義塾大学を始め他の大学とも、更に産学連携、学生ベンチャー支援を進めていきたいと思っています。

――スタートアップについての見極めのポイントは何でしょうか。

スタートアップの次のステップとして、IPO(株式の新規公開)やM&A(事業売却)などの証券ビジネスが発生しますから、当社でも専任の部署がスタートアップをサポートし、スタートアップ企業の人たちと、知見・経験・資金力のある大企業を結びつけるマッチングイベント(Daiwa Innovation Network)を定期的に開催する等、様々な取組みを行っています。

まず重視するのは、「ビジネスモデルがしっかりしているか」ということ。赤字からスタートしても、将来はきちんとマネタイズされて利益を生んでいく、経済的価値を創出していくことがベースです。社会的価値の創出に留まり、経済的価値を創出しないままでは、それは単なるボランティアです。

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