ドワンゴ×エヴァ制作会社×麻生塾 福岡からアニメ・CG人材を育成

「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明監督が社長を務める映像企画・製作会社「カラー」と、カドカワの子会社でニコニコ動画の運営で知られる「ドワンゴ」、九州最大級の人材育成機関である「麻生塾」の3社が新会社「プロジェクトスタジオQ」を福岡に設立。その背景と構想について話を聞いた。

鈴木 慎之介(プロジェクトスタジオQ 技術管理統括、ドワンゴ事業戦略本部 副本部長)

2017年7月、東京から離れた福岡の地に、3DCGのアニメスタジオ「プロジェクトスタジオQ」が設立された。同社はアニメ制作に加えて、講義形式の人材育成から、福岡にいながら一流のスタッフの下で学べる実践的な環境の提供まで、クリエイターとなるための機会を提供している。そのほか、スタジオQでは、アニメCGコンテスト「Award:Q/Project Studio Q Anime CG Award 2017」を開催するなど、人材の裾野を広げる取り組みにも力を入れている。

プロジェクトスタジオQ技術管理統括であり、ドワンゴの鈴木慎之介氏は同社の設立背景を次のように説明する。

「プラットフォームとコンテンツは、同じ足並みで進化しなければ、すぐに飽きられてしまいます。その為、ドワンゴではニコニコ動画というプラットフォームを運営すると同時に、映像コンテンツも制作しています。映像コンテンツの一つとして、3DCGを使ったアニメの制作に取り組もうと企画したとき、東京ではクリエイターが不足しており、人材獲得が困難であることに気が付きました。そこで、優秀なクリエイターによる質の高いコンテンツを、効率良く社会に生み出すため、人材獲得が東京ほどには厳しくなく、クリエイティブな都市でクリエイターの人材育成から取り組んでいこうと考え、カラーさんと麻生塾さんにお声がけし、新会社を設立しました」

「プロジェクトスタジオQ」設立記者発表会には、学校法人麻生塾理事長の麻生健氏のほか、ドワンゴ代表取締役会長 川上量生氏、カラー代表取締役社長 庵野秀明氏が登壇。ゲストとして、福岡市髙島宗一郎市長も出席した

常に新しい表現へと進化

10兆円を超える日本のコンテンツ産業。その中でもアニメ・ゲーム産業が生みだすコンテンツの「質」は世界中から高い評価を獲得してきた。人を楽しませるために、新しい表現、新しいエンターテインメントへの答えのない探求がなされる中、テクノロジーの進化や今までにないコンテンツプラットフォームの登場に伴い、表現方法は常に変化しており、プロジェクトスタジオQが設立された要因の一つもここにある。

例えばアニメでは、日本人が昔から慣れ親しんできたセルアニメは、透明なシート(=セル画)を何枚も手描きし、微妙に変化させることで動きをつけてきた。一方、ピクサーに代表される海外アニメでは早々に3DCGに転換されているのだ。昨今、日本においても手描きから3DCGをはじめとしたデジタルへと制作方法の主流がシフトしつつあり、その3DCGのクオリティーにはより表現豊かなものが求められるようになった。

しかし、業界の変化は、問題を生む。今、アニメ・CG業界で大きな問題となっているのは"人材不足"だ。優秀な3DCG関連のアーティストやアニメーター、エンジニアが不足しており、特に東京で採用しようとすると、人材の奪い合いとなり、人件費も高騰している。これでは、社会から要請があっても、適正な価格で良質なコンテンツを世の中に生み出すことはできないのだ。

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