2018年5月号

地域特集 神奈川県

三浦半島、都心から1時間でなぜ衰退? 再生のカギは起業人材

月刊事業構想 編集部

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都心からの交通アクセスに優れているにも関わらず、人口減少が止まらない三浦半島。地域再生を目指す行政や地元企業は、新発想のまちづくりや、スタートアップと連携した事業創出に取り組んでいる。三浦半島再生のカギはどこにあるのか。

三浦半島は基幹産業の衰退などを理由に、人口減少が続いている(横須賀市走水港の風景)

人口減少に苦しむ三浦半島

東京都心から電車でわずか1時間と利便性の高い横須賀市。この市が今、厳しい人口減少に直面している。2013年の総務省「住民基本台帳人口移動報告」では、横須賀市の転出超過が全国ワースト1位を記録。その後も2015年に全国2位、2016年も8位の転出超過となり、本年2月には市の人口が41年ぶりに40万人を下回った。

三浦半島南端、水産業のまちとして知られる三浦市も状況は同じだ。日本創成会議・人口減少問題検討分科会は、神奈川県の1市7町1村を「消滅可能性都市」と推計しているが、唯一の市が三浦市である。2018年3月の人口は4万3,561人。ピーク時の1994年から1万人以上減っており、2030年には約3万8,000人、高齢化率は42%まで高まる見通しだ。2016年には京浜急行電鉄が久里浜線・三崎口駅以南への延伸の凍結を発表した。

三浦半島の人口減少には様々な要因がある。最大の理由は、基幹産業の衰退と雇用の減少だろう。2000年台初頭から日産自動車や関東自動車工業、住友重機械工業などの工場撤退が相次ぎ、かつては携帯電話の一大研究開発拠点として栄えた「横須賀リサーチパーク(YRP)」でもスマートフォンの台頭とともに大企業の撤退・規模縮小が進んでいる。また、より都心に近い川崎市・横浜市で宅地造成やマンション開発が加速していることも逆風になっている。

行政・民間の創意工夫

こうした状況を打破するため、行政や民間が動き出した。

横須賀市は、新任の上地克明市長のもと、横須賀再興に向けた4年間のロードマップ「横須賀再興プラン」を本年2月に策定。「海洋都市」「音楽・スポーツ・エンターテイメント都市」「個性ある地域コミュニティのある都市」という3つの方向性を打ち出した。

特に、停滞感や閉塞感が漂う街から、わくわくできる街への転換を図るために「音楽・スポーツ・エンターテイメント都市」の形成に注力する考え。軍港をはじめとする歴史遺産や、スポーツ、音楽資源などを活用した観光振興とまちづくりを展開していく。例えば音楽分野では、2018年度に横須賀芸術文化財団や音楽企業と連携した「メジャーデビューオーディション」を開催予定だ。

また、横須賀市は空き家率が14.7%と高く、特に高台にあり車が入れない谷戸地区では5~6軒に1軒が空き家になっている。ただ、海などの眺望がよく静かな環境という魅力もあるエリアだ。そこで市では18年度からの新規事業として、空き家をリノベーションして谷戸地区を拠点に創作活動を行う芸術家などを誘致し、コミュニティを再生するという取り組みを始める。

三浦市三崎港近くの釣り具倉庫をリノベーションしたベーグル専門店「みやがわベーグル」

同じく空き家問題が深刻な三浦市では、民間の創意工夫で空き家がよみがえった事例がある。三浦市・三崎港の近くにある元釣り具倉庫をリノベーションしてオープンしたベーグル専門店「みやがわベーグル」だ。三浦で栽培した小麦を使ったベーグルや三浦野菜を練り込んだクリームチーズを販売しており、今では店を目当てに東京近郊から訪れる観光客も多い。この店舗は合同会社宮川リゾートによる企画運営。代表の福井信行氏は横須賀市生まれで、著名リノベーション会社のルーヴィスの社長も務めている。

起業家を半島に呼び込む

福井氏のような、アイデアと強い想いを持ち、新事業にチャンレンジする起業家を見つけて誘致することも地域にとって大切である。

「KEIKYUアクセラレータープログラム」の採択企業。三浦半島での事業プランも多数採択された

例えば京浜急行電鉄は、三浦半島を含む沿線エリアでの起業家との事業共創を目的に、2017年に「KEIKYUアクセラレータープログラム」を立ち上げた。このほど187件の応募から「優秀賞」5社と「アライアンス賞」2社を選定したが、そのうち3社は三浦半島をフィールドにしたビジネスプランだ。

具体的には、三浦半島地区の空き家のクラウドファンディングによる再生事業(エンジョイワークス社)、三浦半島の農地を活用した遠隔農業体験サービス(Root社)、アウトドアアプリを活用した三浦半島への誘客と三浦アルプスのプロモーション(ヤマップ社)が選出されている。採択企業には今後4カ月間にわたり事業創出支援を行い、プランの具体化・具現化を進めていく。

東京都心から近い三浦半島は、地域活性化に取り組みたい起業家にとって、絶好のトライアル環境と言える。兼業・副業や週末起業への社会的関心も高まっている今、企業誘致以上に起業家誘致を進めることが、三浦半島再生のカギになりそうだ。

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