IT創薬から遠隔医療まで AI活用が医療業界で広がり始める

医療費削減、創薬コストの拡大、医師不足といったさまざまな課題を抱える医療業界で、人工知能の活用が広がり始めている。最先端テクノロジーは、日本の医療をどのように変えていくのだろうか。(取材:JASIS2017)

IT創薬では深層学習の研究が活発。ただし応用にはもうしばらくの時間が必要なようだ(イメージ)

IT創薬で始まった深層学習活用

現在、1つの新薬を研究開発して世に送り出すのに、10年以上の歳月と2000億円以上の費用がかかると言われている。有望な新薬候補化合物の発見が難しくなり、ますます研究開発費が増えるなかで、コンピュータを使って効率的に創薬をする「IT創薬」への期待が高まっている。IT創薬とは、シミュレーション技術を用いて、膨大な化合物の中から新薬候補化合物を探索・設計・評価するもの。この分野では今までも機械学習が利用されてきたが、最近では深層学習(ディープラーニング)の活用が急速に広がっているという。

「きっかけは2012年に、データ分析プラットフォームのKaggleが開催したIT創薬コンペ『Merck Molecular Activity Challenge』で深層学習チームが優勝したこと。IT創薬に関する深層学習応用研究の論文は2013-15年に年間1-2本でしたが、16年は5本に増え、2017年は半年間ですでに25本に達しています」と、東京工業大学情報理工学院の石田貴士准教授は説明する。

しかし研究は活発なものの、応用はまだほとんど進んでいない。理由の一つは深層学習に使えるデータの少なさ。学習データセットが豊富な画像認識と異なり、IT創薬では化合物や標的タンパク質、実験結果等で十分活用できるデータが限られているという。 

「ただし昨年から今年にかけて、neural fingerprintなどブレイクスルーとなる色々な技術が登場し、深層学習の有効な応用例も蓄積されてきました。深層学習で今までにない化合物をコンピュータ上でデザインすることも今後可能になると見ています」。IT創薬で深層学習はまだ実用レベルではないが、今後数年で大きな飛躍が期待できそうだ。

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