「×地域活性」クロスゼミ紹介、AIを活用した就職活動支援
地域活性化に向けて、
社会課題を論究する
事業構想大学院大学のクロスゼミ「×地域活性」(小塩篤史教授・村山貞幸教授・見山謙一郎教授)は、複数の指導教員による進行の下、地域活性化という大目標にかけ合わせた多様な社会課題を議論し合う。6月9日には総四名の報告者が登壇。「ゴルフ場活性化にむけた映像活用」「スポーツと地域活性化」「農業×IoT」「工学高校設置構想」といった多彩な論題で構成された。
各人の切り口は個性的で、「『ゴルフ場』と『映像技術』の組み合わせで魅力的なアリーナを創出できないか」「アスリートの引退後、競技スポーツ以外のすそ野を広げる啓蒙や、マイナースポーツの普及など、活躍の余地が多いのではないか」「日本のモノづくりの伝統に立ち、グローバルな視点を持った高度職業人材を育成したい」等の切り口でアイデアを具体化する発表を行なった。
3時間以上に及んだ本ゼミでは、異分野とはいえ関心の重なり合う院生同士が多く、高度に技術的な議論が相次いだ。ここでは報告全体に共通した、教授陣による印象的な指摘を二点紹介したい。第一に、主観の枠から出て、客観的根拠を探し、広く社会課題全体を俯瞰し自分が担うべき部分を見定めることの必要性である。これは院生個々人による議論の深め方が過度に「専門化・分節化」しており、初めて話題に触れる人々には分かりにくくなってしまっているためであった。他方で第二に、敢えて実現可能性を度外視した構想のユニークさを押し出すよう提起されたことも、示唆深い。つまり、会社組織や行政現場などの手続的コードに準じた計画へ描き直すことは事後的にも可能である、むしろこの演習の場では例えば「最もこの媒体では解決の難しそうな社会課題を解決する」といった、いわば構想の限界に挑戦する試みもあってよいのではないか、という提起であった。
こうした幅を許容する自由な風土も大学院演習の大きな魅力である。しばしば、社会人大学院生は実務上の様々な課題に直面するなかで、研究で掲げる理想の板挟みに直面する。他方でリアルな利害関係から離れた闊達な議論を通じて、むしろ現状の突破口を見出せる場合が数多くある。地域の文化や慣習に根ざした具体的な解決を目指す本ゼミの取り組みは先駆的である。
進化する就活 AIで女子大生のキャリア支援
大学生の就職は学生に有利な「売り手市場」が続くが、自分のキャリアに迷う学生は多い。多くの大学ではキャリアカウンセラーを配置して、キャリア相談を受ける体制をとっているが、なかなか足が向かない学生も多い。
本学修了生で女子美術大学の教員でもある岡崎さんは、AI(人工知能) の活用で学生の相談に24時間365日対応するサービス「Career Bot(キャリアボット)」を2017年6月に開発した。
80%以上の学生が満足
Career BotはAI Messenger(株式 会社サイバーエージェントの連結子会社である株式会社AIメッセンジャーが提供する、人工知能を活用した自動応答が可能なチャットプラットフォーム)を用いて開発したサービスである。
岡崎さんは、当サービスを開発するに当たって、12,000件を超える学生からの相談内容をデータベース化した。改善前の現在でも学生モニターによる利用満足度は80%を超えている。
「定型的な質問に対しては、CareerBotがチャットで対応し、複雑な質問に対しては私が対応します。学生は就職活動で悩む時間が減るため、学業に集中できる時間が増えます」と岡崎さん。
「チャットであれば、学生はいつでもどこでも気軽に質問ができます。Career Botの導入で、よく聞かれる質問に対応する頻度が減る為、教職員は他の業務に集中できます。これは生産性向上にもつながり、ワーク・ライフ・バランスを推進できます」。
岡崎さんは本学に在学中、「岡崎人事コンサルタントのキャリア支援産業領域No.1戦略」という事業構想計画を策定した。計画の一つとして、公益財団法人日本生産性本部と協働で立ち上げた「大学キャリア・コンサルタント養成講座(現大学キャリア・アドバイザー養成講座)」は昨年、厚生労働省指定講座にも認定された。
AIを切り口に、キャリア支援のあり方に一石を投じる取り組みが始動している。今後の動向が注目される。
院生の声
最初はMBA(経営管理学修士)を取得したいと考えましたが、MBAホルダーの上司に相談したところ、意外にも発想力を磨くことを勧められ、事業構想を重視する本学に入学しました。
仕事との両立は大変ですが、皆「忙しくても来ている人」ばかりで、若手から社長、公務員から民間と様々な人が集まっている状況を見ると、誰でも工夫次第で通えるのだなと感じます。
年齢を問わず切磋する気風で
同期生には経験豊富な方が多いですが、不思議とフラットな関係が築けるので良い意味で遠慮なく発言できます。無知な若手だからこそ言える意見・発想が評価される場面も多々あり、自分の伸びしろや価値を発見できました。
20代前半での進学には迷いもありましたが、歳を重ねても家族ができたり役職が上がれば使えるお金や時間はそう増えないうえ、若い時だからこそ得られる学びもある思います。授業のグループワークから派生した団体「未来交創」では、異業種で協働しこれまでになかった文章本を作りました。今後も、自分が交わることで世の中に新しい価値を創り出していきたいです。