当世流の近江商人、「我が道」を究める 繁盛店に「哲学」あり

明治に創業した菓子店の4代目、山本昌仁CEOが跡を継ぐ際、先代から言われたことは、たった一つ、「次の代をつくれ」。その簡潔な言葉の裏に、伝統と革新の歴史が息づく。

屋根一面が芝に覆われた「ラ コリーナ近江八幡」のメインショップ。「たねや」のフラッグシップ店として、2015年にオープン。建築家・建築史家の藤森照信氏によって設計された

歴史薫る湖国・滋賀県の近江八幡市の丘に、緑あふれる瀟洒な施設が立つ。店内では多彩な和洋菓子が販売され、カフェスペースも。ここ「ラ コリーナ近江八幡」のメインショップは、140年以上にわたって菓子店を営む「たねやグループ」が、2015年にオープンしたフラッグシップ店だ。

「ラ コリーナ近江八幡」は、八幡山から連なる丘に位置し、自分たちで木を植え、小川をつくり、生き物たちが元気に生きづく田畑を耕している。メインショップをはじめ、たねや農藝、本社、飲食店、マルシェなどを、長い年月をかけて手掛ける壮大な構想が進められている

メインショップの1階には、広々とした吹き抜けの空間に和洋菓子の売り場が並ぶ

変化を続けることが「強さ」

栗饅頭のヒットを機に着実に育ってきた和菓子店「たねや」は1872年(明治5年)に、バームクーヘンでお馴染みの洋菓子店「クラブハリエ」は1951年にそれぞれ創業。今や、両店の菓子は全国的な人気を誇る。

たねやグループが展開する洋菓子ブランド「クラブハリエ」を代表する逸品・バームクーヘン

創業当初は家業であった菓子店は今、1800人のスタッフを抱え、東西多くの百貨店に売り場を展開するまでに成長した。

その成長の秘密は、業界の常識や慣習にとらわれずに革新的なスタイルを積極的に導入し、しなやかに変化を受け入れて自由な発想で消費者の心をつかむ「たねや」の哲学にある。

例えば、代表銘菓「ふくみ天平(てんびん)」は、食べる直前に自ら種であんを挟む方式の最中。今では同様の最中も存在するが、これは「最中のつくり立ての美味しさを届けたい」という思いで、「たねや」が初めて考案したものだ。また、甘さを上品に抑えた菓子づくりにいち早く取り組んだのも「たねや」である。

たねやの代表銘菓「ふくみ天平」。ふくよかな餡を、米どころ近江の糯米(もちごめ)を使った芳しい種にはさんで食する、手づくりの最中

現在、CEOとしてグループを率いる4代目、山本昌仁氏は語る。

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