アクセラレーターが誕生 地域ヘルスケア産業を創出・支援

2015年9月から4か月にわたり行われた、経済産業省の平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業、地域ヘルスケアビジネス創出支援人材育成プログラムが、12月18日に最終報告会を迎えた。

初回のプログラムの様子(2015年9月25日 表参道にある事業構想大学院にて)

全7回にわたるアクセラレーター育成プログラム

本プログラムは、地域に密着して次世代ヘルスケアビジネスの創出を支援できる人材を育成することを目的として、経済産業省の主催により実施された。

ヘルスケアビジネスは、既存のビジネスに比べて非常に特殊なマーケットであり、従来の商習慣やセオリーが通じない部分が多く、政策にも非常に左右される領域である。アクセラレーターは、そういった背景も良く理解したうえで、ヘルスケアビジネス創出に向けた事業化支援、経営支援活動を行う必要がある。今回のプログラムは、情報力、思考力、目利き力、設計力、実行力、対話力など、アクセラレーターとしての能力を身につけていきながら、実際に受講者自身がアクセラレーターという立場からヘルスケアビジネスの事業計画書を創り上げていく構成となっている。

各回のプログラムには、ヘルスケアビジネスにおけるトップランナー経営者が講師として登壇し、事業戦略やマーケティング手法、ファイナンス等についての講義を行うと共に、ヘルスケアビジネスやアクセラレーターの実態について、自身の体験談を語った。

非常にレベルの高い事業計画書

こうしたプログラムを経て迎えた12月18日の最終報告会には、経済産業省ヘルスケア産業課課長代理の藤岡氏、地域経済活性化支援機構(REVIC)地域活性化支援部シニアディレクターの国沢氏、同ヘルスケアチームシニアアソシエイトの浅沼氏、事業構想大学院大学准教授の小塩氏が、講評者として参加した。講評者は、受講者の発表を聞いて、次のように語っている。

藤岡氏(経済産業省ヘルスケア産業課)

事業計画書の完成度の高さに、大変驚いている。アドバイスとしては、誰にプレゼンするのか?ということが非常に重要であり、そのための勘所がたくさんある。下調べを十分に行い、政治状況なども考慮してプレゼンを組み立てることが重要だ。

国沢氏(地域経済活性化支援機構)

発表内容は日々、REVICに持ち込まれる事業計画書のレベルとほぼ変わらないもので、短い時間での仕上がりにびっくりしている。短期間のプログラムだったが、自分自身、大変勉強になった。

浅沼氏(地域経済活性化支援機構)

非常にハイレベルな発表だったと思う。一方、アクセラレーターとしてリスクマネー供給者から資金を引き出すプレゼンとするためには、(1)競合との違いを話すと印象が良い(2)最初に全体像を話し、最後にまとめ、という構成だと印象に残る(3)文字の大きさ変える、色を変えるなど、重要なポイントが埋もれないように工夫をする(4)事前練習をして自身のプレゼンを撮影してみると、質問されたことに答えていないなど、本人が気づかない欠点が良くわかる(5)プレゼンに臨むにあたり、リスクマネー提供者に“何をしてほしいのか”、つまり自分が“このプレゼンで何を得たいのか”をはっきりさせておくマインドセットがとても重要である。最後に、アクセラレーターには、『この事業にはこれだけの価値がある!』と自信をもってプレゼンできるよう、考え抜いてほしい。

小塩氏(事業構想大学院大学)

多くの事業創出コンテストの審査員をしているが、発表のレベルがかなり高かった。今後も自信を持って活動してほしい。現在は非常に短期間で、飛躍的に大きく伸びるビジネスが増えてきている。そのため、過去の事例から戦略を立てるコンサルティングに対して、今、未来を見つめてビジネスを実行、実証、実践し、そこから得られるフィードバックを高速で受け止めながら事業に活かしていき、「自分たちが何を創りだせるのか」というビジョンを事業者と一緒に語り、ストーリーを創れるアクセラレーターが必要とされているのではないか。

地域ヘルスケアビジネス創出支援人材育成プログラムは、受講生の“熱”によって実施されてきたといっても過言ではない。受講生それぞれがヘルスケアビジネスを支援しよう、支援できる人材を目指そう、ということに本気で取り組んだからこそ、非常にレベルの高い、事業計画書が出来上がったといえる。プログラムは修了したが、これで終わりではなく、ここからが始まりである。是非、これから地域で芽吹こうとしているヘルスケアビジネスの種を大樹に育てていくために、受講者の今後の活躍に期待したい。

地域ヘルスケアビジネス創出支援人材育成プログラムを終えて

事業構想大学院大学 准教授 小塩 篤史

 

日本のヘルスケア市場は、人口減少・高齢化の中で多くの業界の国内マーケットが落ち込む中でも有望な市場である。多くの企業がそのマーケットへの参入を希望するが、「健康」という誰しもが関わる領域であるにも関わらず、その参入障壁は依然として高い。その理由として、法的な規制の存在や公的保険が存在する中で収益モデルが想定し辛いことなど様々な要因が想定できる。

しかし、明確にボトルネックとなっているのは、「ヘルスケア」という専門性と「ビジネス」経験を越境し、統合できる人材の不足である。健康増進を提供するサービスは、たしかに参入時において越えるべき山が多いが、事業の存在自体が、社会課題の解決に直結する意義深い分野である。健康の問題はもっともっと多くの人が知恵を集めるべき課題であり、資源が投下されるべき課題である。

今回のプログラムは日本にヘルスケアビジネス創出の生態系を構築する、小さな第一歩ではある。修了生の活躍を通じて、小さな一歩が大きな動きに増幅されるようプログラムの継続的な提供を行っていきたい。

 


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