同質的な組織を離れ、10年、20年先の社会や未来像を考える2年間

信州大学との連携授業

前期授業が終わった後の夏季期間にも様々な取り組みを行っている。その一つとして集中講義「技術からの事業構想」が開講された。本講義では、新技術を事業に転換するために必要な事業構想の基本的な考え方、バックキャスティング、技術経営などの枠組みを学びながら、実践的に事業アイデア創出や構想を進めた。

また本講義は包括連携協定を結んでいる信州大学との連携授業であり、信州大学・博士課程の大学院生も履修した。3日間は本学にて講義とグループワークを開催。最終日の4日目は長野県上田市にある信州大学・上田キャンパスに訪問し、日本唯一の繊維学部の施設視察を行った。日本の先端技術から、潜在的な事業応用の可能性を見出し、技術から事業を構想する能力を向上させる講義となった。

1年次生の発表では、教員や院生から鋭い指摘やアイデアが会場を飛び交った

アイデアを出し構想力を鍛える

2年間の修士課程において、1年次には事業構想の種を見つけ出し、「構想案」として具現化していく。事業構想において必要な「知力」や「クリエイティビティ」を養うことを根底にして編成されている。9月には、1年次の院生がアイデアを出し、事業構想を進めていく一環として、発表の場が設けられた。

また2年次生は構想計画を構築していく段階に入っている。夏季期間には、履修しているゼミ単位でディスカッションや実務家訪問を行い、新鮮な気づきを得て、事業アイデアをさらに広げていった。

9月末には後期授業がスタート。新規事業の立ち上げに向けて、アイデアを練り、構想計画に落とし込んでいく。

江端浩人教授のゼミでは岡山県・伊原木隆太知事を訪問し、院生と意見交換を行った

 

修了生の事業構想

10年、20年先の社会や未来像を考える

上杉奈保美さん 王子ネピア取締役、パーソナルケア・イノベーションセンター長2期生(2013年度入学)

入学当初から「日本の高齢社会」をテーマに事業を考えていました。2014年2月より王子ネピアにて紙おむつの商品企画・開発・マーケティングを統括する立場になり、これまでの消費財マーケティングの経験を活かし、日本の製造業における新しい価値創造を目指しています。

高齢化に伴い、大人用紙おむつの市場は拡大することは明らかです。さらに、2025年に後期高齢者となる「団塊の世代」は、ライフスタイルや生活に求める質が高く、これまでと高齢者像が変わっていきます。私は、大人用紙おむつの市場で、時代に合う商品とビジネスモデルの構築を構想しています。構想の実現に向けた小さな一歩として、今年10月に、男性向けの軽い尿漏れ対策の新シリーズ「B-lock(ビーロック)」を発売しました。

会社では今期の利益、現状置かれている課題解決に注力することが当然ですが、大学院では10年、20年先の社会や日本の未来像を考え、そこから会社のあるべき姿を見出す刺激を大いに受けました。会社という同質的な組織を離れ、教科書的な学びではなく、自分の強みや弱みを把握しながら、視座を高く視野を広く社会を研究した2年間でした。現状に閉塞感を覚えていたり、今を変えたいと思っている人は、本学で学ぶ価値が大きいと思います。

<事業構想計画書>

大人用紙おむつ市場における事業構想

2025年には「団塊の世代」が後期高齢者(75歳以上)となり、日本にとって国民皆保険の財源圧迫は避けられません。高齢者介護も在宅ケアが増加すると予測できます。多様なライフスタイルや価値観に対応した既存品にはない尿漏れ対策用商品の新規市場の導入により、少子高齢化が進む日本において高齢者のQOL向上に貢献するとともに、ブランドの価値向上を目指します。

構想の第一歩として、男性向けの軽い尿漏れ対策商品の新ブランドB-lock(ビーロック)を企画し、10月に発売を開始した

 

新事業のアイデアを考え構想する
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