買い物難民を救え 「流通の素人」が発明した画期的移動スーパー
全国700万人と言われる買い物難民をサポートする、移動スーパー・とくし丸。徳島から全国に広がるサービスは「流通業界の素人」の柔軟な発想から生まれた。
徳島県の田舎道を行く、一台の軽トラック。その荷台には所狭しと食料品や生活雑貨が積まれ、行く先々の民家では、それを待ちかねたように出てきた高齢者が笑顔で買い物を楽しむ。いわゆる「買い物難民」をサポートするために誕生した移動スーパー・とくし丸は、徳島発の課題解決型ビジネスとして注目され、スタートからわずか3年で全国的なネットワークを形成している。
代表の住友達也氏は、1981年に徳島県でタウン雑誌『あわわ』を立ち上げ、県内で絶大な人気を誇る一大メディアに育て上げた人物だ。
『あわわ』から身を退いた住友氏が買い物難民問題に着目したきっかけは、徳島の中山間地域で暮らす自身の母親が買い物難民化していたことからだという。
「母親は車を運転できるのでまだマシですが、たまたま一緒にスーパーまで乗せていった近所のおばあちゃんの買い方が異常なことに気がつきました。『買える時に買っておかないと、次はいつ買えるかわからないから』と、一度に驚くほどの量を買い込むことが、買い物難民には当たり前になっていたのです」
高齢者のそんな切実な姿を大きな社会問題であり、同時にビジネスチャンスだと捉えた住友氏は、消費者の玄関先まで直接訪ねて行って食品を売る移動スーパーの実現へと動き出す。
三方良しのビジネスモデル
しかし移動スーパーという構想を抱えて徳島県内のスーパー数社に持ち込んだものの、ビジネスの影も形もないアイデアだけでは相手にされず、「できるはずもない」と冷たくあしらわれ続けた。その中で唯一「やってみましょう」と賛同してくれたスーパー、ファミリー両国の支持を受け、住友氏自身が実証実験用として軽トラックを2台用意。2012年、ついに移動スーパーとくし丸はスタートを切った。
当時すでに、買い物難民をサポートするサービスは数多く存在していたが、決して満足度の高いものではなかった。ネットスーパーは買い物難民の中心である80歳前後の高齢者には、とても使いこなせない。弁当屋やコンビニの宅配も1カ月も食べると飽きてしまい、頻繁に業者を変える人もいるという。生協の宅配サービスに対しては、「注文して1週間後に来る頃には、自分が何を頼んだか忘れてしまっている」という声が聞かれた。
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