ローカル線を「物語」で再生へ 17年間黒字を続ける3セク鉄道

黒字経営を続ける第3セクターの鉄道会社、智頭急行。同社は、都市間輸送を担いつつ、駅舎をピンク色にした「恋がかなう駅」で話題を集めるなど、域外からの集客を増やし、地域を活性化している。

特急「スーパーはくと」は、鳥取~大阪間を約2時間30分で結ぶ。2008年には、グッドデザイン賞を受賞した

多くの第3セクターの鉄道会社が赤字に苦しむ中、17年連続で黒字経営を続けている3セク鉄道がある。鳥取県智頭町に本社を置く智頭急行だ。

智頭急行は、なぜ黒字経営を維持できるのか。同社の岡村俊作社長は、要因の一つとして「都市間輸送を担っていること」を挙げる。

「智頭急行は、地域内のローカル線だけでなく、京阪神・山陽地域~山陰地域を最短で結ぶ都市間輸送を担っています。JR西日本の路線と直結しており、産業、観光のインフラとして機能しています」

岡村俊作智頭急行 代表取締役社長

意識と経営のモデルチェンジ

智頭急行の収益の柱は、京都駅~倉吉駅(岡山)を結ぶ特急「スーパーはくと」だ。

「リーマンショック後、特急の利用者は一気に2割減りました。さらに、2013年には無料の鳥取自動車道が開通し、競争が激化しています。また、急激な人口減少も大きな課題です。こうした変化に対応するためには、従来からの安全性優先に加えて、顧客重視、スピード感、コスト意識の3つを大切にすることが必要です」

岡村社長は「顧客重視」を語るだけでなく、自身でも実践している。自ら乗客に話しかけ、直接に声を聞くとともに、社長就任直後から車掌の乗務日誌に目を通し、現場の苦労や顧客のニーズを把握するように努めてきた。

乗客の声から生まれた商品の一つが、定期券(通勤・通学)用の特急回数券を約半額にした、1枚当たり200円の切符だ。沿線の普通列車は、1~2時間に1本のペースで運行しているため、部活や塾に通う学生も、その時間に合わせてスケジュールを組んでいた。それが、特急券が安く使いやすくなることで、帰宅時間の選択肢が増え、「少し延長して頑張る」こともやりやすくなった。

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