薬局に必要な「原点回帰」 健康ステーション化で地域を支える
急速な高齢化の進展により、「病院完結型」医療は終焉を迎えようとしている。患者を住み慣れた地域全体で支える「地域密着型」医療へと軸足がシフトする中、地域医療の担い手として高いポテンシャルを秘めるのが、昔ながらの街の薬局だ。
岐路に立つ薬局
超高齢化社会の到来と社会保障制度の見直しを背景に、薬局は今、潮目の変化を迎えている。増え続ける高齢者に対し、地域に根ざした薬局が医療を提供する必要性が増しているためだ。
一般的に薬局は、薬剤師が常駐し、医師からの処方箋にもとづいて医薬品を調剤する薬局(調剤薬局)と、一般用医薬品を扱うドラッグストアに大別される。これまで薬局の多くは、病院の近くに立地するいわゆる“門前薬局”として、通院患者の処方せん受付に特化することで、「医薬分業」の進展とともに成長を遂げてきた。
医薬分業が進んだ理由について、帝京平成大学薬学部の井手口直子教授は次のように語る。
「1つは、薬の飲み合わせによる不幸な事故が契機となりました。再発を防止するためには、調剤施設を病院外に移し、処方する医師だけでなく薬剤師も処方内容や薬の飲み合わせを確認する重要性が唱えられました。もう1つは医療費の削減です。当時は薬の公定価格と卸値の差(薬価差益)が大きかったため、病院は処方せんを出せば出すほど儲かる状態に。そのため、余分な薬が処方されることのないよう、国策として医薬分業が進められていったのです」
医薬分業の進展にともない、規模拡大のためのM&Aや異業種からの業界参入が相次ぎ、調剤薬局の店舗数は急拡大を続けてきた。現在、国内の調剤薬局数は約5万5千店あるとされ、コンビニの店舗総数を上回るほどだ。さらに近年は、医薬分業率の頭打ちに加え、調剤報酬と薬価の改定、薬剤師不足による人件費増大の影響などから、個人経営の小規模薬局や地方の薬局を中心に収益確保が困難になっている。
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