高齢化社会を支える食品素材革命 ジェリータジャパンが切り拓く持続可能な健康イノベーション
世界で推計約20%のシェアを持つコラーゲンペプチド・ゼラチン原料のリーディングカンパニー、ジェリータ(GELITA/本社はドイツ・エーバーバッハ)が日本での本格展開を開始して6年。コロナ禍の逆境も「充電期間」に変え、着実に歩みを進めてきた。高齢化が進む日本社会において「未病予防」の観点から素材の可能性を追求し、食品から医療介護、スポーツ、製菓、ペット分野まで幅広い市場開拓に挑む。日本市場の特質性や今後の展望について、ジェリータジャパン株式会社・ゼネラルマネージャーの田辺康治氏に話を聞いた。

世界のリーディング企業
日本参入の理由と背景
「ジェリータは今年で150周年を迎える、歴史あるメーカーです。ジェリータジャパン株式会社は、日本法人として2019年に設立されました」。
そう語るのは、ジェリータジャパン株式会社・ゼネラルマネージャーの田辺康治氏だ。
同社はドイツに本社を構えながら、全世界で事業を展開しており、約2,800名の従業員を抱える。コラーゲンペプチド・ゼラチン分野で、食品、健康食品、医薬品、医療介護、スポーツ栄養、製菓、ペット向け製品など幅広い領域に原料を提供している。
日本法人を設立したのは2019年の事。それまでは日本市場での販売を国内パートナー企業に全て委託していた。
「これまでのパートナーと共にですが、日本でもフルスイングで事業展開していくジェリータ社の方針です」と意気込む。
「高齢化社会が世界一進んでいる日本において、コラーゲンペプチドの活用がまだ十分ではないと感じていました。人口減少や経済縮小が言われる中でも、日本のコラーゲンペプチド市場には大きな可能性があると判断致しました」と田辺氏は経緯を説明する。
現在、日本法人の社員の他、外部パートナーと”Team日本”として協働している。日本での採用も拡大中だが、AIも効果的な活用を模索しながら、さらなる事業拡大を構想している。

コロナ禍での船出
常に前を向いて考える企業文化
ジェリータジャパンは、設立直後は思わぬ逆境に直面した。田辺氏は当時の状況をこう振り返る。
「いざ日本で活動を始めようと意気込んでいた矢先でした。突然、コロナ禍が訪れ、予定していたお客様とのプロジェクトや出展展示会等は次々と中止になりました。輸入が不安定になり、円安も進行するなど、厳しいスタートとなりました」。
しかし同社は危機を前向きに捉えた。
「当社はこの時期を『充電期間』と捉え直し、機能性表示食品の取り組みなどへの準備を進めました。また、グローバル企業として世界に工場を展開しているため、互いに製品を融通しながら危機を乗り越えてきました」。
意外にも、コロナ禍はコラーゲンペプチド・ゼラチン関連製品にとって追い風となった。ステイホームの影響で料理や食品への関心が高まり、需要が増加したのだ。食品業界自体が景気に左右されにくい特性もあり、同社は安定した成長を続けた。
「困難な状況でも、常に前を向いて何ができるかを考える。それがジェリータの企業文化であり、日本法人としても大切にしている姿勢です」と田辺氏は力強く振り返る。
日本法人がドイツとの架け橋に
市場の特性を理解し、日本で貢献
同社の日本法人は、日本とドイツの文化の架け橋としての役割も担っている。田辺氏はビジネス文化の違いについてこう説明する。
「日本の細かさや繊細さは、世界的にも驚きの声が上がることが多いです。そこで、ドイツの経営陣に日本に来てもらい、お客様の声を直接聞いてもらっています。実際に会って、感じてもらうことで、レポートだけでは伝わらない日本市場の特性を理解してもらえるようになりました」。
「例えば、梱包への美意識、包装の開けやすさ、少量パッケージの需要、納期の厳格さといった様々な観点があります。こうした違いを本社に伝え、顧客と会社にポジティブな結果をもたらすことが私の重要な役割です」。
日本特有の文化は、ジェリータ全体でも生かされているという。
「日本に順応していく中で、グローバル全体でのサービス向上にも繋がっています。『日本のお客様に認められれば、それはもう世界の基準を満たしている』と多くの人が認識しているからです」と田辺氏は語る。
健康社会への貢献
未病予防から介護まで
同社の製品は現在幅広い用途で使われている。膝関節向け商品やスポーツ選手向けのタンパク強化製品の販売も増えているというが、田辺氏は今後「未病予防」の観点から、日本国内で深く「根付く」商品を展開していきたいと想いを語る
「医療・介護分野を深掘りしたいと考えています。未病予防や膝の予防、骨の予防などの分野に貢献していきたいです」。
田辺氏がそう思う背景には、業界特有の事情もある。コラーゲンペプチド関連製品などは製品の質において玉石混合の側面もあり、健康への寄与は、その潜在力が十分に発揮されていないため、なお限定的と見られている。
田辺氏はそうした中で、科学的エビデンスを基盤に原料開発を重ね、摂取効果を最大限に高めた商品づくりを支援しつつ、「未病予防」の分野を通じて、広く展開していきたいという。
「具体的には、介護施設に入られている方やスポーツのアスリートなどに対して、関節・骨・腱・靭帯 等にフォーカスした商品によって貢献出来ます。そうした方に貢献することで、やりがいも感じています」。

日本市場における今後の展望について、田辺氏は明確なビジョンも示している。
「日本ではまだジェリータ社の認知度は高くはないのが現状です。当社はB to B に留まらず、B to B to Cの視点をもって、最終消費者に向けた情報発信が必要だと考えています」と語る。
「『Improving Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフを高める)』、これが当社の理念です。人々の健康に貢献し、それが社会保険費用の低減にも寄与にも繋がると思います。ジェリータジャパンは日本の高齢化社会が抱える課題に対して、私たちならではの解決策を提供していきたいと考えています」。
田辺氏の言葉からは、日本の社会課題解決への強い意欲と、日本市場への深い理解の姿勢が感じられた。高齢化社会の日本において、コラーゲンペプチドやゼラチンという素材が持つ新たな可能性に、今後も注目していきたい。