2015年1月号

社会イノベーションの起こし方

地域発・エネルギー会社の設立で、環境・経済・雇用に貢献

岸波 宗洋(事業構想大学院大学 事業構想研究科 准教授、事業構想研究所教授(兼任))

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地方創生の目玉政策の一つとして注目されるのが、地域でつくる小規模なエネルギー会社の設立だ。未利用バイオマスや太陽光、風力、中小規模水力などを活用しエネルギー会社をつくることで、地域経済が活性化し、地元に雇用を生む起爆剤となる。

2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギー(地熱、太陽光、風力など)の導入と普及を最大限加速することが示されている。2016年の小売全面自由化と相まって、同分野への新規参入事業者は急激に増えている。その中で、農山漁村地域においては、バイオマスなど生成に必要な天然資源を多く保有しており、本来、再生可能エネルギーを活用するには最適な場所といえる。

しかしながら、実際、天然資源が潤沢な地域に再生可能エネルギーの投資をするのは都市型の企業が圧倒的に多く、地方企業は全体の20%超にすぎない。そのため、投資対象となった地域の収入は地代および固定資産税などに限られ、モノは増えるがカネやヒトが増えていない。これは、地方を疲弊させてしまう典型的な現象といえる。

だからこそ、地方自治体が発露となってエネルギー会社をつくる必要があるのだ。

出典:農林水産省

ドイツの再生可能エネルギー普及事例

ドイツは、再生可能エネルギー分野において、世界的な先行者でもある。そのドイツでは、再生可能エネルギーの30%程度が地方自治体を端緒とした企業である。

2009年、改正された「省エネ政令」を起点とした「再生可能エネルギー熱法」がドイツ国内において施行された。法案の目的は、2020年を目処に再生可能エネルギーによる熱供給をシェアアップさせることにある。さらにバーデン・ヴェルテムベルク州など地方条例レベルでも法整備が進み、新築・改築での環境性能や再生可能エネルギーによる熱供給に対する優遇措置や罰則を設けている。極めて強制力の高い法案といえるだろう。

一方、ドイツの自治体が積極的に再生可能エネルギー事業に取り組み始めた背景がある。1991年に施行された最初のFIT(再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度)によって、当初は、特にバルト海沿岸部における風力発電が推進された。

さらに、1990年代後半になって、牧畜、食品加工業などを中心に、バイオガス発電(し尿や有機廃棄物などからガスを抽出しコージェネなどを行う)が隆盛を極める。さらに2000年代においては、バイオマス発電(生物資源由来の燃料による発電)がほぼ内部資源を消費しつくすまでに事業成長を果たした。

そして、この再生可能エネルギーがドイツに根付いた根本的な理由は、「地域に高い収益を還元できたこと」に尽きるといえるだろう。2000年のFIT改正時点から2013年において4倍の雇用成長率を誇り、約37万人の雇用を育んでいる(FIT改正により引き上げた需要が約25万人)。ドイツで、このような雇用成長率を誇る分野は他に類がない。

出典:村上敦著「kWh=¥ キロワットアワー・イズ・マネー」(2014、いしずえ新書)

国の支援策

話を日本に戻そう。地方発エネルギー会社の設立を強力に後押しする法律が、既にある。「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(農山漁村再生可能エネルギー法)は2014年5月から施行されている。要は、以下を満たす取り組みを推進・助成することを目的とした法律である。

「農林漁業と調和した再生可能エネルギー発電による農山漁村の活性化に資する取り組み」

特に、バイオガス・バイオマス発電に関する助成採用が散見され、同法律との親和性が高い分野であるといえよう。もちろん、農地転用モデル(主に太陽光)等のように、一概に遊休資源の活用に甘んじたものではなく、農業や林業など既存産業自体を継続可能としながら、再生可能エネルギー発電を画策し、あくまで農山漁村の発展に資することが重要である。

すでに、現在の日本の状況は、2000年のドイツ(改正FITを施行した当時)の状況によく似ているのではないだろうか。技術や市場が十分にコモディティ化されていないため、買取価格や設備価格自体は依然として高い。しかし、現状のドイツでの価格下落を考えると、近い将来、日本においても価格水準がドイツ並みに下がることや、グローバル価格で統制されていくことなどを前提に対処しなければならない。再生可能エネルギーの場合、FITに応じた収支計画を前提としたビジネスモデルでなければならない、ということに留意が必要である。

出典:農林水産省

FITなど電力政策を注視

ちなみに、FITに関する政策動向は、自治体や地方企業がエネルギー会社設立を構想する上で、大変重要な視点である。

日本では、2012年7月から2015年6月末までの間に再生可能エネルギーの活用を急加速させるため、FITを導入したが、この背景として、ドイツではFITを起点として再生可能エネルギーのシェア拡張を実現した経緯がある。一方で日本の場合、2014年3月の電力各社への申し込み総電力量が単月で2700万kWを超えた(その97%が太陽光)。そして、9月に、経営が維持できないことを理由に、九州電力が接続保留を表明した。それを皮切りに北海道電力、東北電力も歩調を合わせる態度を取っている。

現状、政策動向として、経産省、農水省などはバイオマスや風力など他分野を活性化すべく政策見直しを行っている。もともと、発電側の太陽光ニーズが高いのは、開発リードタイムが短縮できることにある。太陽光が、発電までのリードタイムを1年程度としているのに対し、バイオマスは3~4年程度を見なければならない。

これでは、PPS(新電力会社)がFITの恩恵にあずかる前に、FIT相場の抜本的な見直しが行われる可能性があるため、こぞって太陽光を模索している状態だ。従って、他分野エネルギーを志向させるためには、中長期に渡るFITや国の助成による活性化が必須であり、電力政策の行方によって、この可能性が大きく変わることとなる。この点にも注目してほしい。

最後に、地方創生の原動力として、地域の既存産業(林業や農業、漁業など)を活性化するために、収益が保証されたバイオマスなどのエネルギー事業を立ち上げることは大いに有効である。

地方創生において最も重要なことは、新しい産業を招致することや新しい事業を創造するだけでなく、既存資源や産業、文化との調和によって雇用を創出し、合目的による地域の一体感を形成することだ。そして、事業の継続性は、地域への経済浸透によって担保されることを十分に理解したうえで、自治体発エネルギー会社の立ち上げを画策してほしい。

岸波宗洋(きしなみ・むねひろ)
事業構想大学院大学事業構想研究科准教授
事業構想研究所教授

新事業のアイデアを考え構想する
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