「ものづくり」と「ものがたりづくり」の融合で生む新産業

京都市・門川大作市長インタビュー

「日本に、京都があってよかった。」京都のPRコピーである。これが、世界に、京都があってよかった、に変わりつつある。世界の文化首都となるべく、教育、交通、観光、産業活性、環境対策、文化などを相互にリンケージさせる戦略を次々と京都市が打ち出しているのだ。戦略的な施策の根本の発想、狙いを門川大作市長に聞いた。

「京都は基本的に宣伝しない―それが老舗商法の哲学なんです」。そう門川市長は話す。

材料を厳選し、手間暇かけてほんまもんを作り、心のこもったサービスを行う。そうすれば、わかる人にはわかってもらえる、だから宣伝は不要。逆に、宣伝にお金をかけている人は、自らのサービスに自信がないのではないか、そう見られることもあった。

「しかし、世の中は情報化時代です。"ほんまもん〟を作っても、どう情報発信され、どう伝わるかが大事です。例えば、レストランで外国人向けに英語のメニューを要請してます。でも、『毎日メニューは変わるし、聞いてもらえばちゃんと説明します』という返事です。市役所もダメです。もっと広報に力を入れるべきと、ある社長にお叱りを受けました。京都から学ばれて実施された他都市の施策が新聞に載った時に、市の職員が『うちは10年前から実施している』と誇っていた、これは企業の広報担当なら叱責を受ける事態だ、と。これからの都市は、"ほんまもん〟と情報発信が重要なのです」。

そうした情報発信の先進例に、京野菜をあげる。今年85周年を迎え、日本最古の歴史を誇る京都市中央卸売市場では、終戦後、野菜を京ものと他の産地の生産物を完全に分別して販売。しかも、筍などでは農家ごとに競争を行った。「先人に感謝したい。いち早く取り組まれ、万願寺唐辛子、九条ねぎ、賀茂なすなどのブランドが生まれました。そのおかげで、他の集約農業との差別化ができた」。

質の向上、工夫で形成する観光戦略

門川市長の戦略も、常に"ほんまもん〟と発信型で行われている。

10年前は年間3800万人程度。2000年に、年間5000万人達成を目指し、100もの事業を行い、2年前倒しで目標を達成。次に掲げる戦略は、「質の向上」だ。

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