ブリ奨学金で話題 全国最年小の副町長が語る、地方創生の真髄

鹿児島の小さな自治体に赴任してきた、スーパー公務員。全国の地域を訪れ、学んだ経験から、次々と革新的な施策を実現。就任から1年足らずで、早くも地域は変わり始めている。

鹿児島県の北西端に位置する長島町。23の島々から構成され、その豊かさと多様性を井上副町長は「長島大陸」と表現する

鹿児島県の北西端に位置する長島町。南北15kmの長島を中心に、伊唐島、獅子島など合計23の島々からなる人口1万921人の小さな町が、今、「地方創生」の先進都市として注目を集めている。高校・大学卒業後、島に戻ってきた若者の奨学金返還を免除する「ぶり奨学金制度」、ネット求人サイトと連携した地方創生人材の採用活動など、イノベーティブな施策を次々に打ち出している。

長島町の基幹産業は農業と水産業。なかでも養殖ブリは出荷量日本一で、世界27カ国に輸出している

この町の地方創生を牽引するのが、30歳の若き副町長である井上貴至氏。総務省から地方創生人材支援制度で長島町に赴任してきた、史上最年少の副町長だ。

地域のミツバチとして

井上氏は大阪府生まれ。路上生活者が多かったり、緑が少ない地域で育ったことで、自治体の責任の大きさや可能性に興味を持つようになり、東京大学を卒業後、2008年に総務省に入省。人事交流で愛知県庁市町村課に出向したことが、ひとつの転機になったという。

「仕事で県内各地を訪れるうちに、地域には隠れたヒーローが沢山いると実感しました」。東京に戻ってからも週末などを活用して全国津々浦々を訪問し、地域活性化の先駆者たちと交流することをライフワークとしてきた。それらの情報を実名ブログで発信、さらに自身が立ち上げた霞ヶ関での朝活「地域力おっはークラブ」に先駆者を招いてネットワーキングを行ってきた。

地域の現状を知り、痛感したのは「ミツバチのように、地域や人を繋げる存在」が不足しているということだ。「地域で活躍する面白い人は多いのに、他の地域との交流がなく、地域の良さや課題に気づかない。とくに小さな市町村では、地域の中と外を繋ぎ、企画やアイデアを生み出す人が不足しています」

その課題を解決する方法を模索していたところ、国が地方創生を打ち出す。絶好の機会と井上氏が提案したものが「地方創生人材支援制度」だ。意欲と能力のある国家公務員や大学研究者、民間人材を市町村長の『右腕』として2年間派遣するもので、井上氏は自ら第一号として長島町に赴任した。

井上貴至(いのうえ たかし)長島町 副町長(地方創生統括監)

「長島大陸」を盛り上げる

「長島町の場所さえも知らなかった」という井上氏が赴任したのは2015年4月のこと。「沢山の魅力があるのに、知名度が低いし、ブランドがない。まず全国に名前を知ってもらうことが大切だと考えました」

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り72%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。