世界シェア2位の実力、千葉県産ヨード

日本はヨード(ヨウ素)生産量で世界シェア2位。その大半は千葉県産だ。日本の数少ない天然資源であり、様々な産業で利用が広がるヨードの可能性を、関東天然瓦斯開発の吉井正德社長(日本ヨード工業会会長)に聞いた。

─なぜ千葉県はヨード生産量が多いのでしょうか。

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よしい・まさのり/1949年生まれ。72年早稲田大学理工学部卒業、関東天然瓦斯開発入社。営業部長、常務取締役茂原鉱業所長などを経て、09年に代表取締役社長に就任。日本ヨード工業会会長

千葉県を中心とする南関東一帯の地下には「南関東ガス田」という巨大な天然ガス田が存在します。可採埋蔵量は3500億立方メートル以上と言われ、現在の生産量で換算すると800年分に相当します。この天然ガスは水溶性で、かん水(塩水)に溶解し地中に埋蔵されており、千葉県の茂原市を中心とした地域で採取されています。

このかん水に含まれる元素がヨードです。ヨードは海水などにも含まれますが、微量のため抽出は経済的に不可能です。一方、かん水には海水の約2000倍のヨードが含まれ、濃縮・精製が可能です。日本最大の水溶性ガス田を持つ千葉県は、ヨード生産量も日本一です。

当社はわが国初の天然ガス事業会社として1931年に発足しました。以来、茂原市を中心とした九十九里地域にガス井を開発し、家庭用から産業分野まで幅広い用途の天然ガスを供給しています。ヨードの生産量でも世界有数の規模を誇ります。

急成長するヨード市場 液晶材料や医療分野でも活躍

─現在の需要動向は。

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ヨード(ヨウ素)

2012年の全世界での生産量は3万2000トンと推測されます。ほとんどをチリと日本が占め、日本は約30%にあたる9500トンを生産しています。そのうち千葉県は国内生産量の75%を占めています。

1990年以前の世界の生産量は1万1000-2000トンでした。この約20年間で3倍近く需要が増えたことになります。

─どのような用途で需要が拡大していますか。

ヨードは工業、食品、医薬、農業などあらゆる産業で活用される資源です。新興国の経済成長で世界的に需要が伸びたことが大きな理由ですが、同時に、ヨードの用途開発が急速に進み、新市場が成長しています。

代表例がレントゲン撮影に利用される造影剤です。ヨードのX線吸収機能に着目し、従来品よりも格段に造影能力が高い「第三世代」と呼ばれる造影剤が1980年代中頃に開発されました。現在はヨード需要の22%を造影剤が占めるほどです。

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