2050年カーボンニュートラルへ CO2削減技術CCS・CCUで産業競争力強化

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年3月13日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

三浦 洵一郎:資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料環境適合利用推進課(カーボンマネジメント課)。CCSやCCUの社会実装・普及拡大に関する業務に携わる。
三浦 洵一郎:資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料環境適合利用推進課(カーボンマネジメント課)。CCSやCCUの社会実装・普及拡大に関する業務に携わる。

【資源エネルギー庁 カーボンマネジメント課】に聞く、CCSやCCUの推進によって目指す未来とは。経済産業省という複雑な組織を「解体」して、個々の部署が実施している政策について、現場の中堅・若手職員が説明する「METI解体新書」。今回は、資源エネルギー庁 資源・燃料部 カーボンマネジメント課で、CCSやCCUの社会実装・普及拡大への支援を通じて、カーボンニュートラルの実現と産業競争力確保を目指す、三浦 洵一郎さんに話を聞きました。

脱炭素化が難しい分野でカーボンニュートラルを進めるカギ。CCSとは?

――― ご所属の資源エネルギー庁 資源・燃料部はどのような部局ですか。

担当業務は大きく分けて3つあります。1つ目は、化石資源の確保です。カーボンニュートラルの流れの中で、化石資源からクリーンなエネルギーへと統合していくという大前提はありつつも、エネルギーの安定供給という観点ではLNGや石炭などの化石資源も必要です。化石資源の安定供給のため、資源外交やサプライチェーンを維持強化するための業務を担っています。

2つ目は、カーボンニュートラル実現のため、次世代のエネルギーを確保することです。資源・燃料部では特に、CO2と水素を反応させて作るメタンなどの合成燃料や、微生物の機能を使って作るバイオ燃料などの技術開発、社会実装するためのサプライチェーンの構築支援をしています。

3つ目は、工場から排出された排ガスを分離回収し、CO2を取り出して地中に埋める「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)」や、回収したCO2を原料として再利用する「CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用)」の推進です。

――― その中で、三浦さんが所属しているカーボンマネジメント課はどのような業務を担っていますか。

CCSやCCUの社会実装や普及拡大に向けた政策を担当しています。まず、CCSについて少し詳しく説明すると、鉄、化学、石油精製、セメントなどの脱炭素化が難しい分野や発電所などで発生したCO2を分離回収し、地中に埋めて貯留することを言います。

CCS
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2024年5月にCCS事業法が成立しましたが、これにより、CO2を埋めることができる貯留層が存在する可能性がある地域を「特定区域」に指定したうえで、特定区域で試掘やCO2の貯留を行う事業者を公募して、事業許可を与える制度ができました。

CCSは、CO2をコストをかけて埋めるもので、有価物を生み出しているわけではありません。社会実装や普及拡大が進みにくい側面がありますので、当課では支援策の整備も合わせて進めています。

――― CCSを行っているのは国内だけですか?

いえ、カーボンニュートラルに必要なCCSの量を確保するためには、海外にCO2を持っていくというのも一つの選択肢としてあります。

CCSの貯留地を探す際は、まず地層の中を見てCO2が埋められるかどうか精査します。断層の影響があるかないかなどもポイントです。事前の地中探査の結果、CO2が埋められそうだという結果が得られていても、実際にCO2を埋めてみると埋まらなかったということもあります。それくらい適地を探すのは難しい作業です。

一方海外では、油ガスの採掘跡がよく見られますが、そこには元々油が入っていたのでかなりの確率でCO2が埋められることがわかっていて、貯留ポテンシャルがあります。ただ、ロンドン条約において越境してCCSを他国で行う場合は、二国間の合意が必要と定められているため、相手国政府との調整が必要になります。直近では、昨年10月にマレーシアとMOCを締結し、越境CCS実施のための合意に向けて、両国間で調整を進めていきます。

――― CCSに関して、様々な政策を進めているのですね。

これまでお話したもの以外にも、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じた技術開発の支援も行っています。CCSを行うには、まずCO2を分離回収する必要がありますが、これには熱エネルギーが必要で、コストが高いという問題があります。これは、CCSに限らずCCUにも共通する課題です。現在、新しい回収技術の開発をしているところで、実装できればCCS/CCUのコスト低減につながります。

CCUの社会実装に不可欠なサプライチェーンの効率化

――― CCUについても教えてください。

CO2を分離回収するところまではCCSと一緒ですが、そこからさらに、取り出したCO2を合成メタンや合成燃料、コンクリートや化学品などを作る原料として再利用することを言います。CCUを行うための技術開発についても、NEDOの交付金事業やグリーンイノベーション基金を活用して大規模な支援をしています。2030年に技術確立して社会実装のスタートラインに立つことを目指して、現在様々なプロジェクトが動いています。

CCS
(※画像クリックで拡大)

――― 社会実装のための課題はありますか。

社会実装のためには安価な価格でCO2を輸送できるサプライチェーンの効率化が不可欠です。個別の分離回収技術やCCU技術の開発は進んできていますが、この2つをつなぐサプライチェーンでコストがかかると社会実装には至らないため、サプライチェーンの効率化に取り組んでいるところです。

また、CCU/CCS両方に言えることですが、環境価値の見える化が重要です。CCUをした商品がどのぐらいの排出削減に繋がったかを定量的に測り、環境価値として見える化し、「少しコストが高くてもその分の環境価値があるのだ」という情報発信をしっかり行うことで、需要喚起につなげていくことが大切です。地球温暖化対策推進法では、事業者がCO2排出量を算定して、国に報告すること、報告を受けた国はその数値を公表することが定められていますが、CCSやCCUをした場合にこの制度上でどう扱うかといったルール整備も、検討しているところです。

――― 三浦さんが担当されている具体的な業務についても教えてください。

私は技術、国際、環境活動を担当しています。CCSのコスト低減のために必要な技術開発支援をNEDOとともに行っていて、NEDOの専門的な知識を生かし、技術面でのアドバイスをもらいながら、プロジェクトの執行管理を行って、支援した事業が社会実装につながるよう導いていくことがミッションです。

他には、CO2の分離回収からCCUへとつなげていく産業間連携にも取り組んでいます。最近は、必ずしも大きなコンビナートがある地区だけでなく、日本各地で産業間連携に取り組んでいます。例えば、佐賀市がごみ処理場から出るCO2を回収して、植物工場やバイオものづくりに活用するといったCCUを実施した取り組みがあります。ごみ処理場というとネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、クリーンな環境価値を生み出す施設とも言えます。佐賀市の事例は、排出事業者とCCU事業者を繋いだプロジェクトで、サプライチェーンの産業間連携の好事例だと考えています。こういった事例をしっかりと情報発信して、他にも広げていきたいと思っています。

「まずは技術開発、コスト低減だと取り組んできましたが、今後はビジネスとして成り立たせるために産業間連携やサプライチェーン効率化がカギになります」、と三浦さん
「まずは技術開発、コスト低減だと取り組んできましたが、今後はビジネスとして成り立たせるために産業間連携やサプライチェーン効率化がカギになります」、と三浦さん

――― 国際業務ではどんなことをしているのですか?

越境CCSの実施に向けて、シンガポール政府、マレーシア政府、インドネシア政府などと意見交換をしています。各国でどういう政策を進めているのか、お互い越境CCSを実現するために何が必要か、議論しています。

CCS/CCUともに情報交換の場としての国際会議にも参加しています。年に一度、ERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)と共催でアジアCCSネットワークフォーラムを開催していて、東南アジア各国の政府や企業を集めて、CCSの世界的な動向や各国政府での政策について情報を共有しています。

CCUについても、NEDOとの共催でカーボンリサイクル産学官国際会議を開催しています。昨年は、大阪・関西万博との連携を図るために、大阪で会議を開催しました。登壇いただいたゲストやモデレーターを、国際会議の翌日に万博会場にご案内し、CCUを行ったコンクリートやDAC(直接空気回収技術)など、日本の技術を見学いただきました。

環境対応だけでない、産業競争力の強化に直結する仕事

――― 環境面でメリットの多いCCSやCCUは、しっかりと推進していかなければならないですね。

CCSは、環境や脱炭素の観点からいうと非常に大事ですが、それにどこまでコストをかけるのかという指摘を受けることもあります。実は、競争力強化の観点でも非常に重要で、鉄や化学など排出削減が難しい分野でCCSを実施すると、CCSを行った高炉で作られた鉄は”環境価値がついた製品”として売ることができます。昨今、EUなどは、事業者の排出削減だけでなく、製品自体も脱炭素製品でなければならないという規制を設けており、グリーン鉄やグリーンな化学品を作っていくことは今後競争力の強化の面でも重要になってきます。CCUも同様で、回収したCO2をリサイクルするので、結果的には製品の脱炭素化につながります。CCSもCCUも環境に良いだけでなく、産業競争力の強化や経済成長にも寄与するものだということはぜひ知っていただきたいです。

――― 技術面における日本の強みはあるのでしょうか?

例えば分離回収技術は日本が強みを持っている部分で、世界シェアの6、7割を占めています。現在は、大型の分離回収技術がメインですが、それに替わる回収技術も世界に先駆けて開発に取り組んでいます。国内での活用はもちろん、個別技術の国際展開もしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

――― 三浦さんは今の業務について、どのように感じていますか。

担当業務の範囲が広く、特に専門的な知識をキャッチアップするのは大変だと感じました。例えばCCSでは地質のデータを見てCO2が埋まるか判断するのですが、データを読み解くのは素人にとってなかなか難しい作業です。こういったところは専門的な知見を持つJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)と連携してワンチームで取り組んでいます。様々な方の知見をお借りしながら、組織の垣根なく、チームアップして取り組むことでうまく事業を回せていると思います。

そして、CCS/CCUに限らず、今後2050年カーボンニュートラルに向けてGX市場が大きく育っていくと思います。ただ、現時点では、市場がどうなるのか不確実性も高いので、国としてしっかりとコミットして開拓していくということをぶれずにやっていくことが大事だと思います。GX市場で日本企業が勝てる力をつけていくためには、民間企業だけでは予見性がネックとなって投資が進まないところを、日本の勝ち筋になるのがどこかしっかりと見極めて、支援し、制度設計や需要喚起の施策を作っていくのは、経済産業省ならではの仕事です。脱炭素という観点だけでなく、経済成長や競争力強化につながるもので、とてもやりがいのある仕事だと感じています。

3歳児の父でもある三浦さん。「かわいい盛りで土日はほぼ子供と遊んでいます。強制的に仕事を忘れられるのでいいリフレッシュになっています」
3歳児の父でもある三浦さん。「かわいい盛りで土日はほぼ子供と遊んでいます。強制的に仕事を忘れられるのでいいリフレッシュになっています」

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