海外事例に学ぶ観光税の導入・運用のポイントは? 持続可能な観光の実現へ

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年12月4日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

夏のウェールズのスノードン山(ウェールズ語表記:Yr Wyddfa)で登山を楽しんでいる大勢の観光客
夏になるとウェールズのスノードン山(ウェールズ語表記:Yr Wyddfa)の頂上には大勢の観光客が集まるのが一般的だ。 Copyright: David Dear / flickr

ウェールズ政府は2027年より「宿泊税(観光税)」を導入する予定である。この新法案に基づき、多くの宿泊施設で1泊あたり1.25ポンド(約246円)、キャンプ場や簡易宿泊施設では0.75ポンド(約148円)と、観光客には宿泊形態に応じた追加料金が設定される見込みだ。

我々が世界各地の宿泊税の影響を調査した報告書がこの法案策定の基盤となっている。

私たちの調査によれば、同様の取り組みはスコットランドでも進行しており、これによりウェールズは欧州25か国目、世界全体で50か国目の宿泊税を導入する地域となる。

多くの観光税は「宿泊滞在税」という形式を取っており、スペイン、イタリア、アメリカ(これらの国々では「宿泊税」として知られている)がその例だ。一方で、ニュージーランドのように国境で入場税を課す国や、最近のベネチアのように日帰り観光客に入場料を課す国もある。

ウェールズの宿泊税は「特定目的税」として運用される予定であり、観光関連プロジェクトに限定して使用される。例えば、文化財の保護、交通インフラの改善、地元住民と観光客の双方に役立つ施設の整備が挙げられる。

ウェールズ議会(Senedd)において、労働党政権、プライド・カムリ党(Plaid Cymru)、自由民主党など、70%以上の議席を持つ勢力がこの税制を支持しているが、反対の声も根強い。保守党や一部の業界団体は「既に欧州の他の国や地域に比べ重い税負担を抱えるウェールズ観光業界に追加負担を課すことで、観光客が減少する可能性がある」と主張している。

しかし、現実はもう少し複雑であり、我々の研究によればこれらの懸念は誇張されている可能性がある。産業界や地域の関係者と協力して適切に運用すれば、宿泊税は観光地の魅力を高めると同時に、観光客による悪影響(観光公害・オーバーツーリズム)を軽減する手段となり得る。

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