消費拡大、資源需要増加、廃棄コスト増加 世界中で「都市鉱山」活用は不可避
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年10月2日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
環境汚染や気候変動、生物多様性の喪失は、地球規模の「三重の危機」を引き起こしている。この問題に対し、国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、廃棄物をごみではなく貴重な資源と見なすべきだと提言している。都市鉱山はまさにその一例だ。
従来の採鉱といえば、地中から貴重な資源を掘り出すことを連想するが、都市鉱山では廃棄物からこれらの資源を回収する。この資源は、建物やインフラ、不要となった製品などに含まれている。
都市鉱山とは、都市が生み出す廃棄物に含まれる貴金属や素材の蓄積である。特に電子廃棄物は、多くの鉱石よりも高い割合で貴金属を含んでいる。しかし、国連の「グローバル電子廃棄物モニター」では、2022年に6,200億ドル(約90兆円)相当の資源が電子廃棄物として廃棄されたと推計されている。
都市鉱山は、世界中の都市でこうした「隠れた」資源を回収する持続可能な手段であり、資源の枯渇や廃棄物管理の課題に対する解決策の一つである。また、過剰消費の中心であり、気候変動を加速させる温室効果ガスの排出源でもある「都市」で、その実現が可能な取り組みである。
どんな廃棄物が「鉱山」になるのか?
コンクリート、パイプ、レンガ、屋根材、鉄筋、電子廃棄物などが回収・再利用できるものとして挙げられる。こういった都市の廃棄物からは、金、鉄鋼、銅、亜鉛、アルミニウム、コバルト、リチウムといった金属のほか、ガラスやプラスチックなども「採掘」できる。なおこれらの金属や素材の回収には、機械的・化学的処理が必要になる。
一方、こういった廃棄物の単純な処分には高い財政的・環境的コストがかかる。たとえばオーストラリアでは、廃棄物の約10%が有害であり、埋立地の処分コストが急騰している。廃棄物を捨てる場所が不足しつつある都市部では、この問題の深刻さが都市鉱山の成長を後押ししている。そうすれば、私たちは供給が限られている資源を回収しつつ、廃棄物処理によるコストを削減できるのだ。
世界各地での都市鉱山の取り組み状況
ヨーロッパでは、建設物の建築時・解体時の廃棄物に注目している。欧州全域では年間4億5,000万~5億トンの廃棄物が発生しており、廃棄物全体の3分の1以上を占めている。欧州委員会は、都市鉱山戦略を通じて、2030年までに加盟国全体で非有害な建設・解体廃棄物の回収率を少なくとも70%に引き上げることを目指している。
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