世界が注目するサーキュラーエコノミー 持続可能性と経済成長を同時に叶える戦略

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2025年12月4日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

最近、「サーキュラーエコノミー(Circular Economy=CE、循環経済)」という言葉を聞く機会が増えている。資源を効率的に循環させて持続可能な社会を実現するとともに、経済成長も同時に目指す経済システムを指し、世界で注目されている。大企業だけでなく、中小企業や地方自治体、消費者にも関係するテーマだが、資源を大切に使う考え方としては、「リデュース(Reduce、使用量を減らす)」「リユース(Reuse、製品などの再利用)」「リサイクル(Recycle、原材料として再利用)」の三つからなる「3R」が広く浸透している。今回の政策特集では、聞いたことはあっても中身をよく知らない人も少なくないCEを掘り下げる。まずは、身近な企業の事例やCEの概念などの紹介から。

ユニクロ、販売済みダウン商品を回収し新商品に

「捨てるなんて、とんでもない」――。ファーストリテイリングが展開するカジュアル衣料品店「ユニクロ」は、消費者が不要になったユニクロのダウン商品を店舗に持ち込むと、回収するダウン商品1点につき、5000円以上の買い物で500円割り引くデジタルクーポンを1枚プレゼントするキャンペーンを2026年1月11日まで全国で実施中だ。これまでに販売した全てのダウン商品が回収対象で、一定の条件があるが、ファスナーが壊れていても、生地が破れていても構わないという。ユニクロは、回収した商品からダウンとフェザーを取り分けて洗浄・乾燥、新しいダウン商品の素材としてリサイクルする技術を東レとのパートナーシップで確立している。ダウン商品の回収は2019年に始まり、その数は2023年までに約150万着を超えている。

ダウン商品を擬人化したキャラクターでリサイクルをPRするユニクロの広告バナー
ダウン商品を擬人化したキャラクターでリサイクルをPRするユニクロの広告バナー

新産業創出で「持続可能社会と事業成長の両立」目指す

ユニクロはダウン商品に限らず、全商品をリサイクルしたり、リユースしたりする取り組み「RE.UNIQLO」を進めている。「服が次に活躍できる場」をつくり、循環型社会に貢献するのが狙いだ。服の廃棄をできる限り減らすため、愛着のある服を長く大切に着続けられるようにリペアしたり、新たなアイテムにリメイクしたりできるサービスを提供する「RE.UNIQLO STUDIO」も国内の18店舗で展開。回収して洗濯した古着の販売は3店舗で試験的に行っている。

日本の伝統的な刺繍「刺し子」を取り入れてリメイクした例(ユニクロのホームページから)
日本の伝統的な刺繍「刺し子」を取り入れてリメイクした例(ユニクロのホームページから)

ファーストリテイリングはCEの実現に向けて、製品としての服だけではなく、生産する過程や販売方法、販売後にまで踏み込んだ「新しい産業」を創出するといい、「これまでにない服のあり方を世界に示し、持続可能な社会への貢献と事業の成長の両立を目指す」構えだ。

廃棄物対策・環境対策の「3R」から経済成長も目指すCEへ

同社の戦略にも見られるように、資源を効率的に循環させて持続可能な社会をつくり、さらに経済的な成長も目指すのがCEの特徴だ。リデュース、リユース、リサイクルの「3R」は、最終処分場の逼迫(ひっぱく)や不法投棄などの課題に対応するため、主に廃棄物対策・環境対策として企業や消費者に行動変容を促してきた。CEでは「3R」の考え方に加えて、経済成長という「経済的目標」と、経済安全保障や持続可能性、人々の幸福といった「社会的目標」を同時に実現することを意図している。

CEが注目されるようになった背景

かつての経済活動は、「原材料から製品を作り、利用して廃棄する」という一方通行の「リニアエコノミー(線型経済)」が主だった。「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」が前提で、経済活動が盛んになるほど環境負荷も増す。リニアエコノミーのままでは、世界的な人口増加や消費拡大に伴って資源の枯渇や地球温暖化などの問題が進行、「人類が地球上で安全に、持続的に生存できる環境的な限界」を超えて、潜在成長率を低下させてしまうことが懸念される。こうした背景から、持続可能な形で資源を最大限活用しながら経済成長も目指すCEへの移行が世界の潮流になった。CEへの取り組みが不十分な企業や商品は、将来的に世界市場から排除され、市場を失う可能性も指摘されている。

リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー
<リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー>(※画像クリックで拡大)

CEによる資源の具体的な流れを、自動車産業を例に見てみよう。車がメーカーで組み立てられ、ディーラーを通じて消費者に届き、利用され、廃車・回収されてリサイクルされるという大きな循環の中に、例えば利用の段階で、車を共同利用するシェアリングサービスや長く使い続けるためのメンテナンス、中古車としての再販売などの事業が含まれている。CEでは、様々な事業との協働を通じて、経済を成長させながらも新品の資源の投入量をできるだけ抑え、廃棄物を出さない仕組みが構築される。経済産業省は2023年3月にまとめた「成長指向型の資源自立経済戦略」で、CEを、「バリューチェーンのあらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じ、付加価値の最大化を図る経済」と説明している。

自動車産業を例にした、従来の資源の流れとCEの資源の流れ
<自動車産業を例にした、従来の資源の流れとCEの資源の流れ>資源エネルギー庁のホームページから(※画像クリックで拡大)

日本の強みを生かせる

CEは大切な取り組みだが、企業にとって単なるコストや手間の増加に終始すると、広がりが見込めない。消費者がその具体的価値を認め、積極的に選ぶような商品やサービスの提供が必要だ。日本国内では2020年に50兆円だったとされるCE関連市場について、政府は、2030年に80兆円、2050年に120兆円まで拡大させることを目指している。

日本には古来より「もったいない」といったモノを大切にする精神があり、協調性や調和を重んじる文化的背景がある。「3R」の実践やその過程で培われた高い技術力もある。経産省資源循環経済課は「CEの推進にあたり、産官学の連携、持続的なビジネスとして確立するための投資支援やルール作りなどに取り組んでいく」としている。

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