世界中で高まる熱中症リスク 新開発の繊維素材だけで冷やす服は労働者を救うか
(※本記事は気候変動やよりよい未来に役立つ情報を掲載する非営利メディア『Grist』に2024年8月8日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています。)
地球温暖化が進む中、労働者は過酷な環境に適応するための特別な衣服を必要としている。しかし、同時に政府による保護も欠かせない。
ニック・ルベッキ氏は、ピッツバーグで15年以上にわたり都市型農業に従事してきた。この間、気温は明らかに上昇し、連日の猛暑がブラドック農園での収穫に影響を与えている。都市型農業の実践と農業技術の研修・労働者育成を行う組織Grow Pittsburghが所有するこの小さな都市農園は、稼働中の製鉄所の隣に位置し、レタスやコラード(キャベツの一種)、トマトなどの野菜を栽培している。彼の現状の猛暑対策は、つばの広い帽子と十分な水分補給だ。しかし、最近では一日中農作業を続けるのが「非常に疲れる」ようになってきたと彼は語る。「一日中ずっと農作業するのはもう本当に難しいですね。」
夏の気温はどこでも上昇しているが、特にピッツバーグのような都市では顕著である。2024年は32℃を超える日数が例年の4倍以上になった。これは、都市のインフラが熱を閉じ込め、郊外よりも暑くなるヒートアイランド現象が一因だ。このような状況下で、労働者の健康リスクを軽減するために、科学者やデザイナーたちは、猛暑に対応できる新しい繊維素材を開発している。しかし、労働安全・衛生の専門家や労働者の権利を支援する団体は、こうしたウェアラブル技術の商業化が、たとえ善意であっても、労働者の搾取問題を悪化させる可能性があると懸念している。
気候変動に対応し、屋外で健康を維持するためには、適応が必要であり、熱を反射する繊維は重要な役割を果たす可能性がある。このような解決策は「本当にクールな技術を生むだけでなく、それを責任を持って展開する必要があります」と、気候変動に対する公平な解決策を提唱する非営利団体Climate Resolveの法務担当ディレクター、エンリケ・ウェルタ氏は語る。「それこそが本当に重要なのです。」
ヒートアイランド現象が危険なのは、その累積的な性質にある。昼間、コンクリートやアスファルト、レンガなどの建築物が太陽のエネルギーを吸収し、夜になるとその熱をゆっくりと放出するため、朝方まで高温が続く。エアコンがなく、夜間に体を冷やすことができない場合、熱波が連日続くと、ストレスが蓄積されていく。コーネル大学の労働安全衛生プログラムのディレクター、ネリー・ブラウン氏は、このような状況にさらされた労働者は、熱中症を引き起こすだけでなく、深刻な場合には脳障害や腎不全、さらには死亡するリスクがあると警告する。
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