ESG投資としても注目の学校給食 ケニアの巨大給食センターでは低炭素技術を導入

学校給食制度は、単なる食事提供にとどまらない。飢餓に苦しむ子供たちにとって、安価で栄養価の高い食事は、人生を変える可能性がある。(※本記事は『reason to be cheerful』に2024年11月25日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

給食を受け取るために並ぶケニアの子供たち
Copyright: Peter Yeung

午前7時、ナイロビ郊外に位置するギガキッチン(Giga Kitchen)は、まるで産業革命まっただ中の18世紀の工場のようだ。巨大な蒸気式調理器からは大量の蒸気が立ち上り、黒っぽい作業着を着た大勢の作業員たちが、手にシャベルを持って忙しく動き回っている。

しかし、ケニアの首都郊外にある32,000平方フィートのこの倉庫には、驚くほど現代的な側面がある。圧縮されたおがくずから作られた「エコ・ブリケット」(eco briquettes)で動く2トン機2台で発生した蒸気は、緑レンズ豆やムング豆、黒目豆、タマネギなどが入った調理器につながる配管ネットワークを通じて供給される。食事を載せたコンテナを運ぶ電動自動車が、重量を測定し温度を記録して、トラックへと積み込んでいく。

銀色のコンテナが並べられたキッチンで調理者が巨大な調理器から食事をコンテナに移している画像
このギガキッチンでは、ナイロビ全域の学校に6万食の給食を毎日提供している。 Copyright: Peter Yeung

「(使用済みの)調理コンテナも、蒸気で滅菌しています」と語るのは、ギガキッチンの責任者であるキャロル・キヌシア氏(24歳)だ。横ではゴロゴロと音を立てる調理器から、大量の温風が舞い上がっている。「ここでは何ひとつ無駄になりません」。

2023年8月に開設されたこの巨大な食糧拠点では、ナイロビ全域の学童向けに1日6万食を生産している。地元産のヘルシーな食事が詰められたコンテナは重さ約45キログラムで最大900個が用意され、毎朝市内の学校に配達される。

ギガキッチンは、ケニアの非営利団体Food4Educationが展開する至宝だ。同団体は、ハイテクで低炭素なセントラルキッチンを活用し、アフリカ最大の地元主導型かつ独立運営の学校給食プログラムで、多くの生徒に食事を提供している。

巨大な調理器の中の食材をかき混ぜる女性たち
Food4Educationは、2027年までに毎日100万食を提供すること、そして計画中のアフリカの他2か国への拡大により2030年までに1日300万食を提供することを目指している。 Copyright: Peter Yeung

「問題は、子供たちが気を失ったり、空腹でいたりすることです」と、Food4Educationのケニア人創設者兼CEOであるワウィラ・ンジル氏だ。「なぜ子供たちに食事を与えないのでしょうか? 空腹では学べません。そしてそれが、子供たちの一生に影響を及ぼす可能性があるのです」。

ンジル氏は、子供の栄養失調は解決可能な問題だと主張する。空腹は子供が効率的に学ぶのに必要なエネルギーを欠くことを意味するため、子供の人生の見通しに広範囲に影響を及ぼす問題である、とも。したがって、学校給食を通じて安価で栄養価の高い食べ物を提供することで、授業の出席率や学習成果が向上し、ひいては、より大きく長期的な利益がもたらされることになる。「空腹を満たし、可能性を目覚めさせる」、それがFood4Educationのモットーだ。

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