農業の労働者不足、スマート化・自動化は解決策か 注目が高まる米国の事例

気候変動が農作業をより困難で危険なものにする中、農業労働者達は技術革新がさらなる搾取を助長するのではと懸念している。(※本記事は『Grist』に2024年10月28日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)


ジェレミー・フォード氏は水を無駄にすることを嫌う。

フロリダ州ホームステッドの農場で霧雨が降る中、フォード氏は化石燃料を動力とする灌漑システムを5エーカーの農地で稼働させることがいかに費用がかさむか、地球環境への悪影響について嘆いていた。

今月初め、フォード氏はソーラーパネルで駆動するポンプを用いた地下灌漑システムを導入した。このシステムは定期的に作物の根を潤し、彼の推定では「数千ガロンの水」を節約しているという。初期費用は高いが、このような気候に配慮した投資は必要経費と考えており、現在従業員2人で済んでいる小規模な労働力を拡大するよりも手頃だと見ている。

「これははるかに効率的です。これまで、どうすれば労働力をほとんど増やさずに運営できるかを模索してきました」とフォード氏は話す。

トラクターの車輪に寄りかかるアメリカ人男性
フロリダ州ホームステッドの農場で、自動化技術を搭載したトラクターの車輪に寄りかかるジェレミー・フォード氏。2024年10月撮影。 Copyright: Ayurella Horn-Muller / Grist

自動化技術を農業に持ち込む企業が増えている。この技術は農業界で深刻化する労働力不足を緩和し、農場のコスト管理を助け、労働者を猛暑から守れる可能性もある。さらに、自動化は作付けや収穫、農場管理における精度を高め、温暖化が進む世界で食料生産が直面する課題の一部を緩和できるかもしれない。

しかし、多くの小規模農家や生産者は懐疑的だ。高額な費用に加え、これらの技術が労働者の代わりとしてどれほどの成果を出せるのか、疑問視する声もある。一方で、一部の労働者は、こうした技術革新が自分たちにどのような影響を及ぼすのか、さらには搾取を助長する可能性について不安を抱いている。


一部の農場では、自動運転トラクターがトウモロコシや大豆、レタスなどの広大な畑を耕している。こうした機器は高価で、新しい技術に習熟する必要があるが、畝で栽培する作物は比較的自動化しやすい。しかし、ブラックベリーのような壊れやすい小さな果実や、大きな柑橘類のように収穫に力と器用さを要する作物は、自動化がはるかに難しい。

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