岡埜本店 若き老舗和菓子屋六代目女将が家業立て直しに挑む
埼玉県桶川市に根付いて136年を迎える老舗和菓子店「五穀祭菓をかの」。榊萌美氏は19歳の頃に家業を、そして六代目を継ぐことを決意し、ヒット商品「葛きゃんでぃ」の開発で傾きかけた家業を立て直した。23年12月には市議会議員選挙に当選。事業家と政治家の2足のわらじで地域の再生も見据える。
傾きかけた老舗和菓子店
時代の変遷を目の当たりに
「五穀祭菓(ごこくさいか)をかの」は1887(明治20)年に豆大福などの生菓子を扱う和菓子屋として創業した。その後、1972年、四代目のときに現在の店名に変え、日持ちのするどら焼きなどもメニューに加え、ギフト向けの販売を伸ばしていく。慶弔の需要に加え、2005年にはJALのビジネスクラスの機内食に選ばれるなど、人気店に育っていった。だが、五代目が経営する1990年代から時代は変わり目を迎える。商店街から店が減り、客数も減っていった。現在、「をかの」六代目女将であり、運営元の有限会社岡埜本店 取締役副社長である榊萌美氏は、その変遷と、両親が翻弄される姿を子どもの頃から間近に見ていた。家族は娘に継がせるつもりはなく、自由な環境で育ったという。
榊氏は子どもの頃から、商店街、街の人に目をかけてもらったことで「人のためになる仕事がしたい」と夢を抱き、高校や大学では心理カウンセラーや教師の道を目指して学んでいた。しかし、自分には向いていないことに気づく。そんな折、19歳の頃に母親が病に倒れ入院生活を余儀なくされた。
「そのときに初めて自分が継がなければこの店はなくなると思ったんです。それでも気の弱い自分にできるか迷っていました。商店街で同級生の母親と会ったら、“小学生の頃にお店を継ぐって言ってたよね”と言葉をかけられて。私はすっかり忘れていたんですけど、卒業前に撮影したビデオを見たら、夢をきっぱりと言い切る小学生の頃の自分をカッコいいと思ったんです」
決心した榊氏は、その足で両親がいる病室へ出向き、継ぐことを告げた。19歳、大学1年生のときだった。
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