「実行支援」で切り開く新領域――「はたらき方転換」コンサルティングの進化
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社は、戦略立案と実装の間に存在する「実行」という未開拓領域に着目し、ファクトベースの現状分析と伴走型支援で顧客企業の変革を実現してきた。小野隆正社長は、さらなる飛躍を目指し、「はたらき方を転換する」という一貫したビジョンの下、日本のはたらき方改革をリードしようとしている。

戦略と実装の間にある「実行支援」という新領域
2014年、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社(現:パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社)の一事業部として立ち上がったワークスイッチコンサルティングは、当時の業界構造において見過ごされていた領域に着目した。「従来のコンサルティングファームは戦略策定に特化し、システムインテグレーターは技術実装に専念していました。その間にある『実行支援』という領域に、未開拓の可能性を感じていたのです」と小野社長は振り返る。
システムインテグレーション(SI)とアウトソーシング(BPO)の既存基盤を活かしながら、顧客が実際に取り組むべき業務を伴走しながらコンサルティングするという、これまでにないアプローチだった。
同社が掲げたもう一つの重要な差別化要素が「ファクトベース」の徹底だ。過去の成功事例や経験則に依存するのではなく、論理的かつ客観的な現状分析を起点とするソリューションを提案してきた。
現在、同社はテクノロジーを活用したBPR(業務プロセス改革)を通じて、現場ではたらく人々の「はたらき方」を根本から転換(=スイッチ)する支援を提供。立ち上げから10年の歳月を経て、戦略と実装の間にあるギャップを埋める「実行支援」という独自のポジショニングを確立している。
率直な対話が生んだ事業哲学の原点
事業の方向性を決定づけたのは、とある大手エンターテインメント企業でのプロジェクトだった。その企業では労働環境の改善が重要な課題となっており、「短期間での大幅な業務効率化」という目標に対するコンサルティング支援を求めていた。
「他のファームが短期での目標達成は十分実現可能と提案する中、私たちは持続可能な改革を実現するために率直なソリューションを提示しました」と小野社長は当時を振り返る。組織規模を考慮すると、しっかりとした基盤づくりには相応の期間を要するという現実的な見解を示した。
この誠実な提案はその場で採用が決定。担当者から「率直なご意見をいただけて安心しました」という言葉をもらった。この言葉が、同社が最も重要視する「誠実さと顧客志向」という価値観の原点の一つだ。
小野社長自身にとっても、このプロジェクトは「はたらき方の転換」というビジョンを再確認するきっかけとなった。創造性豊かなコンテンツを生み出す人々が長時間労働に追われている現実。このような現実を変え、“はたらくWell-being”の向上を実現したい。これこそが、小野社長とパーソルワークスイッチコンサルティングが抱く使命である。
ポジションを確立する戦略的分社化
同社は約3年の準備期間を経て、2023年10月にパーソルプロセス&テクノロジー株式会社(現:パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社)からの分社化に踏み切った。
この決断の背景には、二つの戦略的観点があったと小野社長は語る。
最も重要だったのは、ブランディングの明確化だ。「パーソルグループの一員として、BPOや人材サービスの企業と認識されることも多くありました。専門的なコンサルティングサービスを提供する企業として、市場での認知をより鮮明にしたかったのです」。
人材戦略も分社化の重要な要因だった。「SI、アウトソーシング、コンサルティングでは、それぞれ異なる専門性と市場価値が存在します。コンサルティング領域で優秀な人材を獲得し、適切な処遇を提供するためには、専門特化した組織体制が不可欠と判断しました」。
この戦略的分社化は期待以上の成果をもたらした。コンサルティング会社としての専門性がより明確に認知され、商談の効率性と案件獲得数が大幅に向上。さらに、人材採用においても、コンサルタントとしてのキャリアを追求したいという明確な志向を持った優秀な人材が集まるようになった。
使命感を事業力に変える経営哲学と次なる展望
「コンサルティングという事業の本質は『どこの誰にどのような価値を提供するか』という使命感にあると考えています」。小野社長はこう語る。560名以上のコンサルタント一人ひとりが、各業界の「はたらき方の転換」を通じて、人々のウェルビーイングを実現したいという使命を抱いている。同社では、こうした個人の使命感を事業として実現できる環境を整備することで、組織全体のパフォーマンス向上につなげる。
小野社長自身は、社会課題の解決支援を重要テーマの一つに掲げる。「現在は人事部門が何十人もいるような大企業の効率化など、当社の得意分野で実績を重ねています。しかし、真に変革支援が求められているのは中小企業やエッセンシャルワークに従事する人々であると認識しています」。
さらに、パーソルグループとのシナジー創出も積極的に推進していく。コンサルティングと人材派遣、コンサルティングとシステム開発など、グループの総合力を最大限に活用した付加価値の高いサービス提供を実現する計画だ。
「いつの日か『いまのはたらき方の基盤は、ワークスイッチコンサルティングが変革をリードしたからこそ実現した』と評価される存在になること。これが究極の目標です」。そう小野社長は語る。同社が開拓してきた「実行支援」という事業領域は着実に成長を遂げている。コンサルタント一人ひとりの「はたらき方の転換を通して、“はたらくWell-being”の向上を実現したい」という高い志を結集し、パーソルワークスイッチコンサルティングは次なる成長への道のりを歩み続ける。

- 小野 隆正(おの・たかまさ)氏
- パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 代表取締役社長
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