各地の事例から読み解く、地域商社ビジネス成功のヒント

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が主催する地域商社協議会オンラインセミナー「これから更に広がる地域商社の役割」が2021年9月1日に開催された。その模様をレポートする。

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局は、全国各地の地域商社を育て、地域に根付かせるために、様々な支援活動を行っている。その一環として地域商社協議会セミナーを開催しており、今回は4社の地域商社の事例発表とパネルディスカッションが行われた。

4つの地域商社の成功事例

登壇したのは、ヤマガタデザイン代表の山中大介氏、東北絆テーブル代表の千葉大貴氏、瀬戸内ワークス代表の原田佳南子氏、シークルーズ代表の瀬崎公介氏。事例1社目のヤマガタデザインは、山形県庄内地域で「地域課題を事業としてデザインして解決すること」をコンセプトとする街づくり会社。教育・人材・農業・観光の4分野で事業展開するが、ここでは有機農業への取り組みに言及。日本の有機農業のモデル地域となるべく、地域と連携して行う野菜の生産、農業経営者育成、自動抑草ロボット開発について紹介した。

瀬戸内ワークスが運営する「URASHIMA VILLAGE(ウラシマビレッジ)」のウェブサイト。浦島太郎伝説が残る香川県三豊市の荘内半島に位置し、無人島を臨む絶景の一棟貸しの宿

2社目の東北絆テーブルは、宮城県の一般社団法人。震災復興を通じて生まれた絆をもとに、地域と消費地、企業との関係性を見直し、「産地から食卓まで」という連携を新たに紡ぎなおすことを目指している。地域食材プロデュースや、産地の観光地化など、これまでの取り組みを紹介。また、ECサイト「東北食卓百貨店」を開設し、事業に参画する事業者同士が協力しながら共同運営するモデルの構築を報告した。

3社目の瀬戸内ワークスは、香川県三豊市で「ウラシマビレッジ」という一棟貸しの宿を運営。同宿は地元を中心にした11社が出資をして運営。建築やホテルのサービス、リネンのクリーニングなど、運営上発生する仕事は、全て株主に外注。外資に頼るのではなく、地元のみんなで力を合わせて事業をつくっていく取り組みを紹介した。

4社目のシークルーズは、熊本県上天草市で、国内でも珍しいJRと接続する航路「天草宝島ライン」を運営。公共交通の動線を新たにつくったことで、何もなかった地域を九州屈指のリゾート地に成長させた。瀬崎氏は代表を務める球磨川くだり(熊本県人吉市)の事例も紹介。ずさんな経営で赤字だった第3セクターを再建させ、昨年の水害の被害からも復活させた過程を紹介した。

人材確保はUターンに重点を

パネルディスカッションでは、「地域とのコミュニケーションはどうとるべきか」「人材をどう確保するか」などが話し合われた。地域とのコミュニケーションについては、「自分でまず結果を出し、既成事実をつくる」「地域の人と同じ目線、立場で事業を行う」「フィールドワークの際に地域の人と指向が一致する瞬間があり、そういう時に新たな事業が生まれるので、そのような体験を多く重ねる」などの意見が出た。

人材確保については「Uターン者の確保に重点を置く」のが最も効率が良く、Iターンは副次的というのが共通認識だった。また、「魅力的な仕事にも関わらず、打ち出し方が下手でつまらない仕事にしか見えない」求人が多いので、「採用をマーケティングと捉えて方法を検討すべき」という意見があった。