社会教育と生涯学習の意義と現代的役割 生涯学習の3つの側面

社会教育と生涯学習の
意義と現代的役割

現代社会において、社会教育と生涯学習の重要性がますます高まっている。急速に変化する社会環境の中で、個人の成長と社会の発展を支える基盤として、これらの教育・学習活動が注目されているといえよう。

社会教育と生涯学習の定義

社会教育とは、学校教育や家庭教育以外の、広く社会で行われる教育活動を指す。具体的には、公民館や図書館などの社会教育施設での講座、職場研修、スポーツ教室、文化サークル活動などが含まれる。一方、生涯学習は、人々が生涯にわたって行うあらゆる学習活動を意味し、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など、様々な場や機会における学習を包括している。

生涯学習の基本概念

ところで生涯学習とは、人々が自発的意思に基づいて、自己の人格形成や生活の質の向上、自己実現のために、自ら学習内容や方法を選択し、充実した人生を送ることを目指して、生涯にわたって行う学習活動のことをさす。この概念は、1965年にパリのユネスコで開催された第3回成人教育推進国際委員会において、P・ラングランによって提唱された。

当初、生涯教育(l'education permanente)という用語で提唱されたこの概念には、いくつかの課題が提示されていたが、主に注目すべき点は以下の通りであると考えている。

1. 青年教育と成人教育の統合、2. 一般教育と職業教育の統合

これらの課題は、従来の教育システムが生涯の初期段階、特に学校教育に偏重していたことへの反省から生まれたものである。

生涯学習の現代的意義

現代社会において、生涯学習が支持される理由には以下のようなものが指摘される。第一に、人生100年時代への対応である。平均寿命の延伸により、人生の後半部分が長くなっている。これに伴い、従来の「教育→仕事→引退」という単線的なライフコースモデルが崩壊し、複線的なキャリアパスが一般的になりつつある。この背景には、自己実現欲求の高まりがあるように思われる。

第二に、急速に変化する社会への適応である。技術革新や社会構造の変化が加速する中、常に新しい知識やスキルを習得する必要性が高まっている。人生100年時代といいつつも、教育を受ける期間、仕事に従事する期間、引退して余生を楽しむ時間が均衡に伸びているわけではない。定年の延長を見ればわかるように、我々は仕事に従事する期間が伸びている。他方で、技術革新そのもののサイクルは短くなっている。したがって、仕事に従事している期間において新しい技術への適応が必要になる。

第三に、「まちづくり」アプローチの重要性である。地域共同体の再興や地方分権の流れの中で、住民主体の地域づくりが求められている生涯学習は、このような地域活性化の取り組みを支えるための能力開発が生涯学習に期待されている。

生涯学習の3つの側面

生涯学習は、Well-beingの向上という観点から以下の3つの側面から捉えることができる。第一に、生きがいの充実である。自己実現をはかるための学習といえる。趣味や教養を深めることで、人生の充実感を得ることにより、Well-beingに寄与できると考えられる。

第二に、能力の向上である。職業能力や生活スキルの向上を通じて、社会生活の質を高め、エンプロイアビリティを向上することが期待される。

第三に、絆づくりである。学習活動を通じて他者とのつながりを形成し、社会参加を促進することが可能となる。人とのつながりを育むことで社会関係資本の形成に寄与すると考えられる。

これらの側面は、個人の幸福を構成する要素である「自由」「自己実現」「共同性(絆)」にそれぞれ対応していると考えられる。